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15

Dec

2021

世界でいちばん幸せな男: 101歳、アウシュヴィッツ生存者が語る美しい人生の見つけ方

特に読む本もなくなったのでということで、何となくAmazonの上位にあったこの本を消去法で購入してみましたが、先日に暇つぶしのつもりで読み始めたら1日半であっという間に読了してしまいました。タイトルである「世界で一番幸せな男」の通り、読んだ後に著者のエディさんは一番の幸せ者だと納得したのですが、何よりも感動したのは、その幸せを実際に分けてもらえた実感がしてくるからなのです。

 副題にあるとおり著者のエディさんはホロコーストの生存者でもあるのですが、どうやってもあの惨劇の舞台であるアウシュビッツのイメージから、ともすると著作全体が悲惨で暗い印象を受けてしまう予断が入ってしまいます。確かに本書の大半を占めるドイツでのユダヤ人迫害のエディさんの経験に基づく描写は、本当にこんなことがつい1世紀も経たない過去に行われたのかと目を覆うばかりですが、エディさんの全体を通して悲壮感だけではなく希望に満ちた人柄から、読んでいる最中も陰鬱とは無縁に、最後のハッピーエンドまで読み通すことができます。
 本書のプロローグに「あちこちに痛ましいところもあり、深い闇と深い悲しみにおおわれているのだが、最後には幸せな人生だったと思ってもらえるはずだ。」とあるのですが、本当にこれ以上のエディさんだけではなく、読んだ人すべてが人生を幸せに思える書籍だと思います。

 新書で200頁ほどの読みやすく読了するのに時間も掛からない本書ですが、本当に大切で濃厚な内容で、大事なことを語るのに冗長な言葉はいらないという見本でしょうか。何しろ本書の章見出しの目次を読むだけで、読む前からわくわくしてきます。全部好きなのですが、丸写しになってしまいますので、一応、ベスト3を選んで書き出してみました。

第二章 弱さは憎しみに支配されることがある。
第四章 やさしさはどこにでもみつけられる。見知らぬ人からもらうこともある。
第十五章 分かち合うべきは苦しみではない。希望だ。

おまけで、下の章もですが、読むとこの言葉の重みが分かります。

第九章 人間の体は最高の機械。

 しかし、本書で登場したドイツでのユダヤ人迫害の発端でもあったと言える「水晶の夜(クリスタルナハト」という事件も、初めて本書で知りましたので、今年の夏にアウシュビッツのビルケナウ収容所を訪れて一通りユダヤ人迫害の歴史については学んだと思っていても、まだまだ知らないことばかりと改めて自分の無知と勉強不足を恥じたところです。

 

 

 本書のラストで、「自分の不幸を他人のせいにしてはいけない」という件があるのですが、まあそこら辺の啓発本で言われてしまうとタダの説教で何の意味も感じないのですが、このアウシュビッツのサバイバーであるエディさんの言葉となるとその重みと意味は計り知れないものがあります。また、同じくラストのページで「しかし、生きているのは幸運だ。・・・その意味では、いま生きているだれもが幸運だ。・・・人生は美しいものにしようと思えば、美しいものになる。幸せはあなたの手のなかにある」という文章がありますが、その英語原文が書籍の裏表紙にもなっているのですが Life can be beautiful if you make it beautiful. It is up to you.” という言葉で、まさに人生で一番必要なことを要約した言葉ではないでしょうか。
 そういえばもう久しく前に亡くなった高倉健さんも「人生の価値は、どれだけ深く感動できたかである」ようなことをおっしゃっていて、少し通じるところもあり、思い出しました。この機会なので高倉健さんのこの名言のお手紙も引用しておきます。

育ちのいい、悪いというのは、決してお金がある家に育つか、育たないかではなく、自分が与えてもらったことに対して、素直に感謝できるかどうかが決め手になる。音楽でも、深く感動する書物でも、胸が高鳴る理由は、同じである。人生を発見して、自分が深くなったような気がするからである。それは錯覚かもしれない。しかし、自分を深めるのは、学歴でも、地位でもない。どれだけ、人生に感動したかである。

※私も高倉健が亡くなられた時の新聞記事で読んだ記憶があったのですが、意外にもネットであまり見つかりませんでした。今回は下の方のブログから引用させてもらっています。

 

 話が横道にそれましたが、このエディさんの著作、間違いなく今まで読了してきた書籍のベスト10には入るような良書です。ちょっとタイトルが「世界でいちばん幸せな男 101歳、アウシュヴィッツ生存者が語る美しい人生の見つけ方」というシンプルで一見あまり重みも(面白味も)なさそうで勿体ない感じもするのですが、読み終わった後はこのシンプルなタイトルの重みと意味が逆に心に入ってくるという感じでしょうか。不謹慎な言い方なのですが、読み物としてもとてもノンフィクションとは思えない波乱と奇跡に満ちていて、本当に「現実は小説より奇なり」という感じで、息つかせない物語になっています。このアウシュビッツという悲惨で人類でも最も深い闇を描きつつも、全体を通して陰鬱どころか明るく希望に満ちているのは、このエディさんのなせる業で本当におっしゃっていることに説得力があります。

 

 今夏に見学してきたアウシュビッツでしたが、今年はそれに引き続いてこんな良書にも巡り会えて何だかポーランドに縁を感じる次第です。是非、今年の締めくくりに読まれることを強くお勧めします!本書にも登場しますが、100歳を前にTEDxにも登壇されてスピーチをされています。この短いスピーチに凝縮された本書のエッセンスとエディさんの人柄がよく分かりますので、是非こちらもご覧になってください。

本作品の評価:5

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