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2021

三体Ⅲ 死神永生 上三体Ⅲ 死神永生 下

最近これほど発売が待ち遠しかった書籍も珍しいのですが、ようやく三体シリーズの完結編である「三体III 死神永生」が発売されましたので、Kindleでダウンロードして読了しました。正直、第二部にあたる前回の「三体Ⅱ 黒暗森林」が衝撃的で、かつエンターテインメントとしても比類ない出来栄えのSF大作だったので、三部作目は多少見劣りしても致し方あるまいという妙な!?期待値の下げ方をしつつ読み始めたのですが、もう寝る間も惜しんであっというまに上下巻の大作を読み切ってしまいました。

今回は三体の二部で主人公として描かれていた「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」の一人でもある羅輯(ルオ・ジー)が脇役のキーマンとして登場するものの、主人公は新しいキャラである若い女性の程心(チェン・シン)に代わっています。そして幕開けは面璧計画と同時期に発動されたいた「階梯計画」から始まるのですが、そこから上下巻を通じての時代の移り変わりがテンポ良いを通り越して目まぐるしい変わり方で、その期間を通じて冬眠をしながら主人公である程心がガイド役のようにストーリー展開を導いていきます。翻訳も良かったせいもあるのですが、文章からその紀元(キーとなるイベント毎に紀元が変更されていくのですが、確かにそれだけのインパクトのある事件ばかりなので、もしかしたら西暦が将来置き換わることがあるとしたら、そんなことがきっかけだと思わせるような描写でもあります)ごとの地球と太陽系の生活風景が生き生きと伝わってきて、これも上下巻通して全く飽きさせない本作の魅力なのかと思います。

正直、全巻の「黒暗森林」のモチーフからどうやって風呂敷を更に広げるのか皆目見当がつかなかったのですが、危機紀元から始まった三体危機の収束による楽園のような「抑止紀元」と、執剣者(ソードホルダー)の交代に伴う前半の三体文明との決裂と衝撃的な人類の敗北、一転して前巻からの伏線であった宇宙に深淵に逃亡した艦隊の生き残りである<藍色空間>による黒暗森林に向けた座標送信による「送信紀元」、その後の雲天明との再会とメタファーである創作物語、そして黒暗森林攻撃を避けるための掩体世界を構築した「掩体紀元」、そしてクライマックスに向かう「銀河紀元」と、紀元が目まぐるしく変わる中で、最初の階梯計画そのものや途中の四次元ポケットなども全ての伏線がきちんとかつ衝撃的な種明かしで回収されていくストーリー展開は、本当に凄いSFが出てきたという感慨深い思いで一杯になります。

下巻の途中でのクライマックスとも言える場面が、超文明による黒暗森林攻撃である「双対箔」による次元化攻撃による太陽系崩潰シーンなのですが、「三体Ⅱ 黒暗森林」の時に何度も読み返した三体文明の水滴による太陽系艦隊の全滅シーンを格段にスケールアップした描写で、読んでいるだけでも映画の壮大なスペクタルシーンを思い描きながら同じように何度も読み返してしまいました。

下巻の後半で明かされる宇宙の謎!?とも言える、超文明による宇宙改変の結果としての今の姿という内容も一つの解釈になり得る可能性もありつつ、スケールの大きさと地球環境を改変している人類の所業と根は同じなのかと考えさせられる考察で、これまた前回の黒暗森林の解釈をスケールアップさせたような哲学的考察に富んだ内容でした。

これだけ盛沢山なのにすべてをストーリーとして繋げて、最後まで飽きさせずに読ませる本書は、間違いなく三部作の中でも一番の傑作(正直、刊行と同時に3部とも読んだので、どれも読んだ直後はその時の傑作だったのですが。。。)と言えますが、最初の三体から次巻の「黒暗森林」、三部作最後の「死神永世」と本当に凄いSFだと思います。前にスティーブン・バクスターの「虚空のリング」を読んだときは、ジーリークロニクルを超えるハードSFはないのではないかと思っていましたが、三体シリーズは間違いなくスケールと言い、宇宙哲学の解釈と言い、それらを超える面白さと示唆に富んでいるシリーズだと思います。

すっかり興奮した書評になってしまいましたが、三部作を通じて映像をも思わせる豊かな描写力と毎回違う主人公と時代背景にも関わらず一貫したストーリーと、最後まで発散し続ける!スケールの大きさは、しばらくは並ぶ小説が出そうになり稀代のSF大作であることは間違いないかと思います。そこまで考えたところで、映画化(映像化)はされているのかと検索してみたところ、今の時点では途中で頓挫した計画ばかりで、これだけ壮大なストーリーの映像化は当分先になりそうな雰囲気です。

確かに本音では、そう簡単に映像化されても困る!とも思えなくないので、しばらくは様子見でちょうどよいのかも知れません。それでも、それぞれの巻に用意されているかのような映像化シーン(最初の巻はやはり、三体協会のタンカーをナノテクのワイヤーで切断!してしまうところでしょうか!?)は、いつの日か映画館で見てみたい気もします。それまでを楽しみに、日本に帰国した際には二部と三部の書籍も購入してみたいと思います!



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