Thu

21

Feb

2019

私たちは時空を超えられるか 最新理論が導く宇宙の果て、未来と過去への旅 (サイエンス・アイ新書)

こちらの本もすっかりお馴染みになった松原隆彦先生の書籍なのですが、最初は今まで読んでいた宇宙論の入門的な書籍でかつ最新の書籍ということで、何か焼き直しの知識でも書いてあるかなという程度で読み始めました。ところが、冒頭から相対性理論の宇宙船の浦島効果の話から具体的に宇宙の大きさを理解させるという糸口にすっかり没頭してしまい、これまた一気に読んでしまいました。本書は3部構成の非常に分かりやすい内容で、いわゆる時空とは何かと最新理論から導き出される時空を解明する糸口を丁寧に解説しています。第一部は未来と過去へ行ける可能性、いわゆるタイムマシンの話を糸口に現在考えられている時空の姿を説明していきます。いわゆる相対性理論のウラシマ効果で、未来へ行ける可能性はまあ読んだことがある方も多いのかと思いますが、それに加えてワームホールを利用した過去へのタイムマシンの理論的可能性が分かりやすく説明されており、初めて過去へのタイムマシンも理論的に可能性があることを知りました。
 第二部は宇宙の大きさの話から、空間的な広がりの時空の話になっていきます。他の書籍でも述べられていることが多いのですが、いわゆる事象の地平線である160億光年の大きさのイメージを分かりやすく解説したあとに、新しい切り口では、では宇宙が「無限大」であったらということはどういうことなのかを解説してくれています。単に果てしなく広いことと、無限大であることは全く別個の可能性があるということで、想像できない宇宙の大きさも「無限大」という括りにしてしまうとそれこそ量子論の多世界解釈も含めたすべての可能性が網羅されてしまう概念だということは分かりました。普段は莫大な大きさ的に使っている「無限大」ですが、そもそも概念自体が違うのだということがよく分かります。
 そして最後の第三部は項数こそ少ないものの、本書の核心が述べられている章で、人間原理の解説から、始まって他の書籍でも触れていたイットフロムビットの話をしつつ、目新しかったのが他の書籍ではさらっと触れているシミュレーションワールドの可能性を詳しく解説してあるところが斬新でした。本書ではワードとしては出てきませんが、同様の概念としてホログラフィック理論があるのは知っていましたが、第一部の時間の話と第二部の空間の概念を丁寧に解説したあとに、映画の「マトリックス」のようなこの世界がシミュレーションである可能性を宇宙論の第一任者が語るのですから、宇宙論というのは止められない!?というか本当に摩訶不思議な理論で興味が尽きません。確かにこれだけ不思議な世界が、ちっぽけなただの人間が解読した物理法則に従う理由を突き詰めると、案外説得力がある!?ように思えるのも不思議です。
 もちろん、現実に生きている自身も含めてなかなかイメージするのは難しい概念なのですが、毎度のことながら宇宙論を突き詰めると、現実の世界が非常にあやふやなものに感じてくるというところが、宇宙論が魅力的に思える理由なのかも知れません。
 最後の文章で、ことの是非を確かめるには将来的に事象のホライズンである時空を超える術を持つしかないと述べられていますが、タイトル通りまさにそこが肝心だと思います。この先の気が遠くなるほど残されている時間の中で、人類がきちんと進化の歩みを進めていければ、この「時空」の先を確かめて、宇宙の本質を理解できる可能性もゼロではないというところが救いでしょうか。数千年後、数万年後の人類がどこまで解明しているのかが本当に楽しみです!


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