Mon

14

Feb

2022

無伴奏ソナタ

異色のSF短編集としたのは、今回の短編集を古本で購入するまで本書の著者であるオースン・スコット・カードのことは全く知らなかったからです。もちろん、多少SF作品が好きだからと言って、SF作家に詳しい訳でもなかったのですが、「エンダーのゲーム」というSF小説はちらほらと聞いたことがあり、その著者ということです。そして、今回たまたま購入してみたこの短編集にあったトップの作品(ただし、本書の表題作ではないのですが)が「エンダーのゲーム」で、どうやら有名な長編作品の原著とも言える短編ということでした。

 この一作目の「エンダーのゲーム」から既に引き込まれてしまうのですが、本書に納められている11作品はどれも一つとして同じモチーフのものはないのですが、短編ながらも独特の世界観が背景に見え隠れしていて、重厚な世界観を伺わせます。二作目の「王の食肉」も宇宙に植民している一エピソードを描きつつ、壮大な世界を連想させます。中盤にある「死すべき神々」などは、星新一のショートショートを思わせる超短編ながらも皮肉が効いたSFですし、「解放の時」は最後に希望があるちょっと悲しくも素晴らしい話だと思います。「四回共同便所の怨霊」はホラーであり理不尽なショートショートです。本著の中で一番ハードSFっぽくて気に入ったのは、題名は長いのですが「猿たちはすべてが冗談なんだと思いこんでいた」という近未来SF?で、未知の知的生命体でもある天体との遭遇を地球社会の歪とうまく絡ませて描いていて、傑作だと思います(このネタだけでも何かの長編小説になりそうな世界観です)。

 そして、表題作である「無伴奏ソナタ」は結果的にはディストピアの社会を描いていると分かるのですが、主人公の目線からこの社会に生きる不条理を描いている奥深い作品だと思います。

 偶然読んでみた短編集でしたが、どれも趣向が独特で他の作品を読みたくなるような期待に満ちている作品です。冒頭の「エンダーのゲーム」の長編作品は、例によってヒューゴー賞/ネビュラ賞を受賞しており、続編も出ている古典的名作になっているようなので、是非、読んでみたいと思います。


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