Thu

20

Feb

2020

巨獣めざめる (上)巨獣めざめる (下)

こちらも巷の書評で高評価でしたので、暇ができたら読もうかと買っておいたものです。正直なところ、読み始める前まではあまりというか全然、期待せずに持っていたのですが、というのもSF小説というよりかは何か怪獣!?出て来そうなタイトルと、そのギャップというか概要には何ともありきたりな太陽系の小事件のような始まりがみてとれたからです。それも上下巻の上の途中まで読み始めると、結局いつもの通りなのですが、本書も期待通り一気に読み進めてしまいました。
 途中までは誰が主人公か今一つピンとこないまま、全編を通しての軸となる氷運搬船の副船長であるホールデンと小惑星ケレスの警備会社の刑事たるミラーの視点で物語は進んでいきます。特に刑事のミラー視点がそのままといえばそうなのですが、ハードボイルド調で小惑星ケレスでの生活感溢れる描写と、地球出身の相棒への境遇を通して、地球と火星、そして小惑星帯の微妙な政治的、人種?的バランスの世界観が語られていきます。本書の強烈な魅力になっているのが、近未来よりもう少し先の未来にあり得るだろう、地球と火星そして小惑星帯に人類が進出して生活感を広げている時代のリアリティと言うか、ここら辺が先々(勝手な感覚ですが数百年後ぐらいでしょうか)ありえそうな未来の世界感が絶妙なリアリティで迫って来ます。
 どちらの主人公も一介の民間人で、彼らの視点から描かれるあり得そうな未来の生活感ある描写が恐らくは本書のヒット、魅力になっているのは間違いありません。恐らくは長い年月をかけて小惑星帯まで生活圏を広げた人類でも、政治的なあるいは物語のキーでもある小惑星人とも言えるペルターと地球人との外見の相違(低重力化の小惑星帯育ちはヒョロヒョロした描写となっています)とそこから来る地球人に対するお互いの偏見、それが遠因となる小惑星ケレスでの壮大な人体実験?も結局は今の地球上の問題の延長線上であり、ここら辺も数百年先でもあり得そうな世界観となっていて妙に納得してしまいます。

 本書の中で火星が一番の科学力ひいては軍事的なアドバンテージを持っているのですが、ここら辺はかつてのイギリス本国がかつての植民地経つ米国に名実ともに国力が凌駕された歴史を彷彿とさせます。そんな世界観の中で、彼らが関わる小さな事件がやがては人類全体の存亡を左右することに繋がっていくあたりもスムースですし、何より最後までホールデン率いるロシナンテ号のクルーが主役を張っていくのは一般的な民間人を主役としたかったという著者の強烈な意思を感じます。本書に何か既視感を感じたこととして、あとがきを読んで諒解したのがあのSF映画の名作たるエイリアン(もちろん初期シリーズの1、2あたり)を意識した主人公たちの描写だったと言うのが納得がいきます。そういえば、エイリアンも巨大企業がエイリアン捕獲に暗躍していたというリアリティのあるエッセンスと本書のプロト分子の秘匿と人体実験が企業主体で進められている共通点は、人類がどこまで行っても巨大企業の営利目的からの陰謀?には警戒感が必要ではという警鐘にも思えます。
 本書のホールデンを主人公に続編を計画されているとのことなので、邦訳のペースもあるかと思いますが、次回作も早く読んでみたいです。ちなみに本書もドラマ化されていうるとのことなので、こちらはちょっと観てみたい気がします。読んでいてなかなか映像的な「映え」も期待できそうでしたので。最近は映像化も見据えた小説描写を意識しているのかもしれませんね。


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