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Sep

2014

宇宙が始まる前には何があったのか? (文春文庫)

夏休みに実家に帰省した際に父親が読んでいたのを見て、タイトルからもう読みたくてたまらなくなり、その場でスマホで発注して買ってしまった本です。こちらに戻ってきてじっくりと読みましたが、いわゆる宇宙論の最新版なのですが、焦点は宇宙の始まりに力を入れています。タイトルから期待するに宇宙が始まる前の事象や状態の話かと思いきや、やはりここら辺の世界になってくると宗教や哲学と同じ土俵?の話になってきて、科学論という枠から随分はみ出さざるを得ない印象があります。それでも筆者の科学者らしい立場から、宇宙の始まりを宗教や哲学とは似て非なるものという論理的推論から解き明かしていきます。結論としてはビックバンがどのようにして「無」から始まったかを、最新の量子論や観測による研究から比較的わかりやすいタッチで解説してくれています。

筆者が述べているように「今の時代は宇宙を観測できる稀有な時期」や「高度文明が同時期に存在しないことは悠久の宇宙の時間を考えれば不思議ではない」などというあたりは、色々と宇宙の本を興味本位で読んできた自分にもなるほどという感じです。こんな解釈の仕方もあるわけですから、宇宙というのは研究するだけでも本当に楽しそうな学問ではあります。究極的には宇宙論は人間の存在の謎を解き明かす「科学」な訳ですから、究極の学問ともいえます。

それでも本書では宇宙論の論争であった「閉じた宇宙」と「開いた宇宙」の最新の考え方や、ダークマターの実情など最新の宇宙論から、マイクロ波(背景放射)の意義など他の宇宙論を読んでいる方にはお馴染みかも知れませんが、改めて分かり易い視点で読むと理解が深まるのではないでしょうか。本書の題名は宇宙の始まりに焦点をあててはいますが、実際にこの宇宙で生きている我々として尽きない疑問は、やはり宇宙の終わり(方)だと思います。こちらは最新のSFでも表現されているものが多いのですが、永劫の果てにはやはり無に戻るのが今の宇宙論の帰結のようです。まあ一個人としては(人類としても!?)全く関係ない時間軸の話なのでしょうが、今の宇宙(世界)が必ず無に帰すという結論は、いつもながら抵抗を感じるというかなんとも居心地が悪い感じにさせられます。

またもう一つのテーマでもある宇宙のはじまる前の「無の状態(定義)」や、「何もない状態は不安定」といった一般人にはやっぱり理解しがたい話は何とも難しいものがあります。宇宙論を研究している著者のような方々は、ちょっと一般人とは感覚が違うのでしょうか!?

この本書を含めて宇宙論の成果というものは、進歩したツールや研究のお蔭で、私の子ども時代と比べて隔世の感があります。きっと人類が生き続ければ、数千年か数万年の時間軸では宇宙の謎も解明できるのでしょう。その時は今の時代のSFのどれが実現していることやら、本当に想像するだけで楽しいことです。そのためにも、もう少し有意義なことに人類の知恵と資産を集中できるような世の中になって欲しいですね。。。


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