Mon

02

Apr

2018

宇宙に外側はあるか (光文社新書)

去年から何冊か宇宙論の書籍を読む機会がありましたが、最新宇宙論はどれも興味深い反面、やはり内容はどれも似たような内容になりがちで、最近は若干食傷気味な読了感でした。そんな中で、あまり期待しないで読み始めた本書「宇宙に外側はあるか」でしたが、最新の宇宙論の解説を分かり易くしつつも、切り口が異なり読んでいる最中も夢中になってしまいました。というのも、どうしても宇宙論は物理学的切り口が主体となりがちで(当然のことだとは思いますが)、我々のような一般人が素朴に知りたい疑問とはかけ離れていく感じが否めませんでした。私が宇宙論で大好きな「眠れなくなる」の佐藤勝彦先生の書籍でさえ、その傾向はあります。そんな中で本書は、物理をさっぱり分かっていない!?我々のような一般人が知りたいこと、まさに「宇宙に外側はあるか?」そのものなのですが、その答えに大分肉薄しているように思えます。
 そもそも物理学的観点から考えるとかなりSF的な話になりますが、多世界解釈がどのような論理で導きだされたのか(量子論の適用問題)、時間を含めたこの四次元宇宙の捉え方に限界があり、かなり複雑怪奇と思われる宇宙の真の姿はまだまだ遠い先にある(知識の球の説明など)ことなど、人間原理の探求のロジックも、他書とは一味違い、そもそも真理と思われている!?数学や物理の切り口・捉え方が人間本位(というか人間が脳で理解する思考方法、すなわち脳の構造に依存している)なので、このような奇跡と思われるような結果になるだけという点は新鮮でした。
 本書を読んだ後だと、やはり宇宙の姿の理解はまだ遠い先にあるものの、よく言われるように三次元(時間を含めると四次元)に依存する存在の我々には捉え切れないものが宇宙にあるのだという推測が成り立ちます。次元の一つである時間の正体を掴めるかどうかが、宇宙論しいては物理学のキーになりそうな予感がします。最後に著者が提示している著者である松原先生が考えられている10の宇宙論の探求テーマの中の一つである「そもそも人間に宇宙の真の姿は理解できるのか」という点が、まさに宇宙の謎の本質な気がしてなりません。本書でも触れられている人類の存続期間、我々と言う存在が人間として今生きている確率論から逆算される悲観的?な予測も興味をそそります。それらを勘定してもまだまだ時間は十分に残されている気はしますので、遠い未来の宇宙論と物理学の解答に夢を馳せられる良書です!昨今の最新宇宙論の紹介と解説が主体の書籍に食傷している方にも大いにお勧めです!


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