Wed

16

May

2018

時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 (ブルーバックス)

ここのところ続けて宇宙論の書籍を読み進めていましたが、流れは同じものの、一度、物理学の視点からの書籍ということで、松浦壮氏の「時間とはなんだろう」を読んでみました。”はじめに”のところで「最先端の物理学は、人類史上初めて、時間の真の正体を捉えつつあるという静かな興奮の中にいます」とあり、古来から自分を含めて世界中の老若男女が一度は思ったであろうこの問いかけに答えが見えつつあるというのは、静かな興奮どころか大興奮ではないでしょうか!?
 と言う事で、本文を読む前から物凄い期待をしつつも、数ある宇宙論書籍で読み尽くした感のある古典物理学から量子力学のおさらいで終わるのかなと(もちろんそれはそれで何度読んでも飽きないので、何冊も宇宙論の入門書を読んでいる訳なのですが)思いつつ読み始めました。
 最初に時間の観念をわかりやすくおさらいした後に、時間が空間の構造の一部である(と言われても最初の時点ではなんのことかさっぱりでしたが)ことを示唆した上で、時間を読み解くために物体の運動である物理学をニュートン力学からおさらいしていきます。ここら辺は他の宇宙論の書籍と大差無いように思われますが、さすが物理学者?であくまで物理の視点での解説なので、宇宙論にありがちな飛躍的な論調ではなく、時間との関連を示唆しながらわかりやすく進んでいきます。象徴的だったのが、量子論をマクロ的な運動にあてはめても現実的ではない対象とするスケールの違いによる「有効理論」と言う物理学の考え方は、私が記憶している限りでは初めての内容で、ここら辺は宇宙論の書籍ではあまり読んだ記憶がない知識でした。宇宙の始まりは量子論が避けて通れないことは理解できても、それをマクロ的に適用して統一理論にしようとすると違和感がある多世界解釈なども(本当は違うのでしょうけども素人にはこのように感じなくもないのです。。。)、このような説明なら納得できます。また古典物理学のニュートン力学から相対性理論までが と言う検証手法でひとつながりになると言う話も新鮮で、物理学はやはり蓄積なのだと納得しました。

 本書の中に何度か出てきた例えで、仮に時間が止まれば光子も運動しないので止まっていることの認識すらできないと言う例えも、ともすればSFを通り越した非現実的な高次元・多次元世界の理論も、イメージできる世界に多少は近づきます。自分の解釈でかみ砕くと、もし時間を超えた次元を認識できる存在からは、しょっちゅう時間が止まっているのかもしれない世界を、我々が認識出来ていないだけなのかも知れません。

時間が物体の運動と切っても切れない存在であれば、時間の矢(過去から未来への一方通行)と言う概念も理解出来なくもありません。いずれにしても時間の正体が物理学の一つの事象・法則として明らかになりつつあると言うのが分かる読後は、静かな興奮どころか物凄い興奮を覚えざるを得ません。SFでありそうなネタですが、この世界自体が高次元の別の世界の物理現象の表れである(ホログラフィック理論)事が真剣に研究されていたり、かのアインシュタインも大統一理論を考える前提としてこの世界の物理現象が高次元の現象が現れている結果だという切り口を考えていたと言うトピックスも新鮮です。宇宙論の書籍と似ているようで、やはり物理学の視点での書籍と言う事で、同じ物理学のおさらいも新鮮でより理解が深まった本書でした。ある意味、子供の頃から誰もが感じている「時間とはなんだろう」という人類普遍の謎に現代物理学が肉薄しているのが、観客席から眺められる?ような本書でした。引っ越し続きの海外駐在なので、大概の読後の本は売ってしまうのが常なのですが、この書籍はしばらくは手元に残りそうな書籍です!


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