Wed

01

Aug

2012

連環宇宙 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

首を長くして待っていた3部作小説(「時間封鎖(SPIN)」、「無限記憶(AXIS)」)の最終作です。原題のVORTEXという単語からすると邦題のニュアンスが若干違うように思えますが、今回の3部作の舞台と結末の宇宙観から考えると「連環宇宙」というのは納得いきます。今回に限らず3部作に共通して、邦題の付け方には何となくセンスの良さを感じますね。
今回の舞台もスピン封鎖が解けた地球が舞台で、第二部より少しだけ時間が進んでいるパートと、1万年後の地球でのストーリーが交差する構成で物語は進んでいきます。1万年後の世界は、2部で登場した主人公の一人であるターク・フィンドリーの手記として語られており、それが地球の時間軸とどう絡むのかは最後まで分かりません。内容は舞台はもちろん1万年後の地球という設定も十分にSFなのですが、どちらかというとどちらの舞台においても主人公の人生ストーリーの面があり、単純なSF小説にはない厚みがあると思います。これは3部作を通じての共通点なのですが、この作者の特徴であり、単なるSF小説で終わっていないストーリーとしての面白さが強みなのでしょう。


最後の仮定体の謎というよりは正体は、ここまで読み進めるともう大体が想像ついてしまっている内容の反復なのですが、それでも宇宙の気の遠くなるような広がりとそれを克服しようとする文明の希望みたいなものが集約されている感じが分かります。そこら辺が仮定体という存在を持ち出した作者の狙いであり、3部作を通してのテーマという感じがしました。
最初の時間封鎖から本当に長い旅をしてきた感じがしますが、久し振りに楽しめた長編SFでした。

この3部作の最後で描かれているアイザックが俯瞰する宇宙の終わり(始まり?)は、現代宇宙物理学に基づいた宇宙の終焉と思われますが、いつも思うのはこの宇宙も気の遠くなる時間の果てに消滅するのかと思うと何とも複雑な気分ですね。
ロバート・チャールズ・ウィルスンはまだまだ日本ではマイナーなようですが、他に翻訳されている長編もあるようなので、また楽しみにしたいと思っています!

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