Sat

02

Jun

2012

無限記憶 (創元SF文庫)

前作、時間封鎖の続編です。前作では地球が仮定体と呼ばれる何者か(何か?)にスピン膜で覆われて時間の流れから取り残されるという、ある意味壮大でスケールが大きい設定で物語が進んでいきましたが、本作は主人公の女性とキーとなる少年の視点から、随分と限定された人間関係から話が進んでいきます。それでも舞台は前作のラストで突如として現れた、仮定体のアーチ(ワープ通路)で繋がれた別の惑星を中心に進んでいきます。そして前作の3人の主人公であるタイラー、ダイアン、ジェイスンも時には主要なキーマンとして、あるいは伝説の人間として登場します。それもそのはずで、本作は前作よりほんの30年後を描いているので、前作の読者ならお分かりの通り第四期の人類はまだまだ健在であるということです。


しかし、この作者の凄いところは前作もそうだったのですが、人物描写や心理の描き方も丁寧で、単なるSFではなく並行して良品な人生の物語を読んでいる感じで、一冊でSFと人間ストーリーの2つを楽しめている気がします。前作の壮大な設定、火星をテラフォーミングして火星人類まで登場するダイナミックさからは、本作は地味で物語の展開にスピード感がないと感じる人も多いようですが、壮大な仮定体の正体を垣間見せるラストやそれにいたる伏線の張り方は絶妙で、私は飽きずに最後まで読み切りました。そして、本作の続編にて三部作のラストとなるVORTEXに繋がる種まきもしっかりなされているようです(恐らくは第五期と名付けられた仮定体に記憶された人々でしょう)。本当に続きを早く読みたくなる久々の大長編SFですね!


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