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Feb

2012

宇宙から恐怖がやってくる! 地球滅亡9つのシナリオ

最近はスティーブン・バクスターを始めとする宇宙全体の歴史を網羅するハードSFを読む機会が多かったのですが、この本を読んでみてようやくバクスター他のSF作家が参照?している宇宙の始まりと終わりの論拠が分かりました!本書を読み終えるとオカルトや唐突なSFを想像させる邦訳のタイトル(原文でもDeath From The Skies!なので直訳に近いのですが)に違和感を覚えるように、隕石の衝突から太陽の爆発、エイリアン侵略の可能性までを豊富で最新の天文学知識を背景に分かり易く解説していて、いわゆる良質のサイエンス・ノンフィクションとなっています。さらに筆者の筆力があるのは、難解とも思えるこれらの事象を分かり易い(そして時に楽しく)文章で描かれていることです。そして圧巻は、最後の恐怖!?である宇宙の終末について、最新の現代天文学から導き出される衝撃的な結論を展開しているラストでしょうか。


本書の冒頭ではSFや映画でおなじみの隕石の衝突の可能性から、ガンマ線バーストといった初めて知るような事象も分かり易く解説しています。これらだけでも地球というのは本当に偶然と天文学的な運の良さ!に支えられてここまで生き延びてきたのだと、実感すると共に薄ら寒くも感じます。そして、最初の時間の試練である太陽の膨張と爆発です。筆者が強調しているようにこれは「もしも」のことではなく、必ず訪れる避けられない「いつか」の恐怖なのです。もちろん今を生きている我々人類には永遠にも等しい時空の果てともいえるタイムスケールの話なのですが、肝心なのは「永遠」ではなくいつかは太陽も消滅するという事実(といって良いでしょう)が未来に存在しているということです。その頃に人類が存在している(人類でなくても宇宙を知覚できる存在が居るかもわかりませんが)かどうかは、想像も難しい時間の果ての話なのですが、今の世の中が消滅するという事実ほど恐怖を感じることはありません。そして、本当の恐怖は宇宙の終末、すべての物質が冷えて粒子まで分解して、その粒子すら存在できなくなる無の時代が来る(と予想される)事実でしょうか。

 この本を読むまでは、ビックバン理論に始まり宇宙は膨張し続けているものの、ダークマター(暗黒物質)の研究が進めば終末論は変わると勘違いしていたので、相当ショックを受けました。今後、研究が進んでこの結論が代わることを祈らずにはいられませんが、永遠ともいえる時間と時空の果てに、人類はおろか物質が存在できなくなる時が来るというのは何だか落ち着かない気分にさせます。
 地球や太陽系、少し広げて銀河系などはいつの日か終わりが来ると納得がいっても、宇宙そのものが週末を迎えるという事実はなかなか衝撃的ではないでしょうか。これは勿論、絵空話ではなく今現在の最新の天文物理学から導き出される理論ともいえる予言なのです。とはいっても本書自体は軽快な筆者の明るいタッチもあり、最後は少し虚脱しますが、最後まで楽しく付き合うことができます。 
この本を読むとスティーブン・バクスターのジーリークロニクルの結末でもある、別の宇宙へ脱出する「リング」の存在を信じ(または創造の可能性?)たくなります。この結論をアインシュタインなどが知ったらどう思うか、ちょっと興味があります。私のような凡人には衝撃的な本であった同時に、時空の定義や時間の操作など宇宙の終末を避けるための色んなアイデアが湧いてくることを期待しています。しかし、この本のタイトルと装丁はもう少し何とかならないですかね。。。

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