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07

Oct

2018

監視機構 サザーン・リーチ世界受容 サザーン・リーチ

先日に読了した「全滅領域」に引き続き、読み進めたサザーン・リーチの残り2作の「監視機構 (サザーン・リーチ2)(原題:AUTHORITY)」と「世界受容 (ハヤカワ文庫NV)(原題:ACCEPTANCE)」ですが、一作目よりボリュームがあったものの楽しく読了することができました。結論から言うと、やっぱりこのサザーン・リーチシリーズはSFのようであってSFではない!という感じでしょうか。
 一作目に続いた二作目の「監視機構」は、主人公が監視機構サザーン・リーチの新任局長に代わります。その中で一作目の主人公である生物学者は無事に帰還した(他の人類学者と測量技師も帰還したことになっている)ものの、記憶を失っている(ふりをしている?)ということで、サザーン・リーチの尋問対象として登場します。物語は完全に新局長である「コントロール」(名前はジョンということであるのだが、いきさつ上、コントロールと自称しかつ呼ばれている)の視点から語られていきます。一見、何の関係もない人物からの視点でどう進むのかと思いますが、前作の心理学者が実は前任者のサザーン・リーチの局長であったこと、心理学者自身がこの「エリアX」に少なからず(というかだんだんと三作目に至る中で分かるのですが多大な)関連があったことなど、前作からの伏線も交えて進んでいきます。
 この「コントロール」なる新局長が実は全くのダメ男で、物語の触媒役にしか過ぎないのは三作目で分かるものの、二作目ではどう絡んでいくのか期待させながら、サザーン・リーチの監督機関でもある「中央」(位置付けからはワシントンDCのNSAみたいな局?)とのエピソードも絡み進んでいきます。このコントロールが新人の局長としてエリアXを把握していく過程で、我々読者も同じ視点で監視機構の役割や位置付けなどを理解していく感じです。ただ、そんな中でもサスペンスというかホラーと言うか何とも得たいの知れない描写と展開が、このジャンルであるニューウィアード的なのでしょうか。それでも二部のラストはコントロールとゴーストバードが共にエリアXへ再侵入するところで終わり、三部作の完結に向けた期待感がある形です。

 そして、圧巻の完結編!となるべき位置付けの三巻目、「世界受容」では変貌したエリアX内のサバイバルを中心に、そもそもエリアXは何だったのかというヒントらしきものが提示されます。その過程で、エリアX内で進化?を遂げた最初の主人公「生物学者」の驚愕する変態した姿の描写、それ以前の調査隊の足跡や経緯も描かれつつ、思うのは文章から想像させるとてつもない世界観で、それだけで読んでいるだけで想像を圧するエリアXの存在感が肌身に感じる感覚です。この感覚はなかなかSF小説だけでは得られなく、ホラーともサスペンスとも違うジャンルなのでしょうか。
 三部作目ではほとんど実際の地球や人類社会がどうなってしまったかは具体的に描写はされず、読者の想像に任されているのですが、最後にコントロールが崩壊?掌握する世界の全容はみえず、エリアXの謎も解き明かされないままの終わり方は何ともどうかとは思います。

 正直、このシリーズはSFではもちろんなく、ある意味でのファンタジーととらえるべきですので、このような消化不良の終わり方もあるのでしょうか。映画化されたほどの世界観の異様さと広がりは余韻が残る感じですので、ある日にまた続編がでるのであれば、読み進めてみたい気もします。


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