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28

Mar

2019

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

日本人作家のSF小説は先日に読了した伊藤計劃の虐殺器官とハーモニー以来ですが、例外はあるものの総じて洋書の方がコンテンツは多いのかと思っていましたので、ほとんど期待しないで読み始めました。結論からいうと、期待を大きく外してくれて!?とてつもなく面白いエンターテイメントSFでした!日本のSF作家と言えば不動の大家である小松左京を始め、ショートショートの星新一など秀逸な方々がいる反面、昨今のハードSFでは量と質共に海外に負けている感がありました。
 そのように感じていた中で、このオービタルクラウドですが、小説の構成としては各人物の各シチュエーションで細かく分かれてる現在進行形で、これは作者の力量がないと散漫で収斂しないで終わるパターンもあり個人的にはあまり好きな構成ではありません。ましてや邦書のスピード感でまとまるのかと心配でしたが、読み始めたら一気に最後まで読了してしまいました。
 まず主人公がまだ20代と思しきフリーのITエンジニアで、いわゆるITベンチャーの卵である若者というところからして、現代のシチュエーションだなと感じます。そんな主人公がどうやって宇宙の軌道の一大事件と関わるのか、詳細は読んでのお楽しみですが、本当にテンポよく無理なくストーリーが展開していくところが、この著者の真骨頂だと思います。
 最後の流星のシーンと壮大なエピローグは、そのままハリウッドの映画を観ている感覚ですが、いやはや物凄い新人が日本から登場しました。と思っていたところ、この著者の藤井太洋氏は私とほぼ同年代で、本著が商業書籍の最初の作品で、ということは本当の最初は何かというと先立って  ネット書籍でセルフ出版した 「Gene Mapper」というと作品がネット上で大注目を浴びたのがきっかけとのことです。またまたネット時代の申し子と思われますが、それまでは普通のサラリーマンだったとのことで、果たしてインターネットが無かったらこの著作も作者も世に出なかったかも知れません。そう思うとこのインターネットが普及した時代にいた事自体に改めて感謝と幸せを感じます。
 この著者である藤井太洋氏ですが、この本書で日本のSF賞であるを総なめし、今は日本SF作家クラブ会長も務めているとのことで、たしかにあとがきで述べていたようにSFというジャンルにおさまらない広くエンターテイメント性のある著作が可能な方だと思います。取り急ぎは、ネットでの処女作である「Gene Mapper -full build-」を急ぎ読んでみたいと思います。本当に楽しみです!


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