Wed

05

Sep

2018

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫)ブラインドサイト〈下〉 (創元SF文庫)

ネットの書評か何かで風変わりなハードSF!?ということで、興味を持ったので夏休みの帰省時に購入した久しぶりのSF小説です。ファーストコンタクトものということで、導入部は2回の無人探査によるコンタクトが失敗の後に、「第三波」と称する友人の主人公たちの宇宙船が異星人と思われる船(建造物?)にコンタクトを試みるところから始まります。異質なのがその乗組員達で、主人公と思われる大脳を切除した統合者、多重人格の学者、生物学者に女性の軍人、それとリーダー格の吸血鬼!からなるメンバーです。最初は何かのコメディかと思いきや、これらの人物像の裏付けがきちんと文中で説明されており、リーダーとなっている吸血鬼は復活種?ということで、人類の手で蘇らせた古代のホモサピエンスの亜種という立派な位置付けとなっており、人類より知性や判断力が優れているという設定になっています。多重人格もこの時代(世界)では、一つの立派な固有人格として認知されていて、かつて精神病扱いされていた昔の世紀とは異なる人物として描写されています。何より大脳切除した主人公が、その理由ゆえにこれらのメンバーをモニターするプロフェッショナルの位置づけで搭乗しており、この主人公の視点で物語が進められます。
 上下巻からなる長編なのですが、登場人物は回想場面以外ではこの乗組員だけで終わるのですが、不思議に間延びせずに一気に読んでしまいました。全体的に描写が抽象的ではあるのですが、吸血鬼もツールとして使役している?ほど発達したと思われる人類社会の世界観が背景にあって、それだけの人類でも持て余している更に高度な異星人とのコンタクトというシチュエーションが、読むものを惹きつけるのかと思います。
 主人公のシリキートンが意識欠如者?ゆえの「統合者」としての能力獲得者という基本的な概念も、最初はさっぱり理解できなかった程ですので(これであっているかも分かりませんが)、相当難解なSFであることには間違いありません。ただ、テーマとして流れている意識(自意識)の有意性うんぬんを抜きにしても、ファーストコンタクトものとしての緊迫感や戦闘シーンなどは、エンターテイメントとして十分楽しめます。最後のエピローグにあたる章で、どうやら地球は吸血鬼が跋扈する世界になってしまったという、エイリアンのファーストコンタクトとはちょっと関係のない終わり方を示唆して終わるのですが、ここら辺は(というかここら辺も)大分ストーリーの結びとしてはなんだか拍子抜けはしてしまいます。そんなんで、楽しめながらも真に理解するには相当難解なのかとWebで解説を求めていたところ、例のジーリーシリーズでもヒットしたこの「45歳からのペーパーバック」に「Echopraxia」という続編の情報が載っていました!これもジーリーシリーズと同じように翻訳される予定があるのだろうかと不安に思っていましたが、なんと既に翻訳されていたようです。この「エコープラクシア 反響動作 上 (創元SF文庫)」ですが、すぐに読みたいのでKindleで購入したいところなのですが、やはり難解なSF小説ほど寝しなに転がって読みたいところですので、次回の帰省予定(お正月?)に購入するためにAmazonでポチッとしておこうかと思います。

 ちなみに本書のキーワードとして出てくる思考実験の「中国語の部屋」や題名そのものの「ブラインドサイト(Blind sight)」などは、ネットでワードを調べないと何のことやらという感じです。他にも幾つかの本書のキーワードが、巻末に補足として解説されているところをみると、やはり文中だけではなかなか理解できないことの現われでしょうか。ついでに著者のピーター・ワッツもWikiで調べてみると、もともとは生物学者(海洋哺乳類)のようでやはりそこら辺からハードSF的要素がきているのでしょうか。ちなみに読後に著者の公式サイトの中で、小説の中の宇宙船テーセウスのイラストやなんとクルーのイラストまで載っているのを見つけました。読んでいる時はなんとも抽象的な描写で、最後まで宇宙船のイメージが湧かなかったのですが(訳のせいなのか背骨やらの単語で全然宇宙船という感じが湧きませんでした)、こちらの自分のサイトにしっかりとテーセウスの詳細なイラストがあるではないですか!?これから読む方はこのイラストだけでも見ておくと大分理解が違うのではと思います。
 しかし、久しぶりに読んでみたSF小説でしたが、面白かったものの難解に感じたのはだんだん歳をとって頭の柔軟性が無くなってきたせいもあるのでしょうか。ひきつづき買ってきたSF小説を読む予定ですが、すこし頭をほぐしておきたいところです。


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