Wed

05

Jan

2011

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とうとうパナソニック電工の便器が人住宅用向けのタンクレストイレで、王者TOTOのシェアを脅かすまでに成長したとのニュースが飛び込んできました!思えば随分昔にもパナ電工の便器の記事をブログに書いたのですが、その同じブランドである「アラウーノ」がこんなにも進化していたとは知りませんでした。

最大のセールスポイントはTOTO、INAXとはことなる樹脂製であることでしょうか。このメリットは大きく、そもそも便器掃除で苦労するのは便座と便器の隙間ですが、これも陶器の宿命である焼き物であるための成形段階で生じる焼成による収縮誤差で、精度の高い器具が作れないことに起因しています。それが樹脂製では難なくクリアできるということです。そのため、精度の高い樹脂成形による「スキマレス」で掃除が楽になることに加えて、パナ電工の凄いところは市販の洗剤を注入することによる自動洗浄機能を備えていることでしょう。


先程の陶器による成形誤差ですが、焼成による収縮の誤差は、寸法にはうるさいJIS規格でも

JIS公差(寸法 5%) ±18mm (JIS A 5207

という他の機器に比べると、ケタが違う位の誤差が認められているのが印象にありました。これでは精度の高い樹脂製にかなうわけもありません。それでも参入当初はパナ電工も随分苦戦したようで、一時は撤退も考えていたようで、先述の記事の引用ですが、

「パナ電工の躍進も、土壇場の賭けだった。88年にTOTO、INAXの窯業2強の牙城だったトイレ市場に参入してはみたものの、「松下のトイレは、流れない」などと酷評され、鳴かず飛ばず。買収した陶器製造会社を売却し、撤退も噂されたが、「樹脂でやってみよう。それでもダメなら断念する」と、腹をくくって勝負に出た。陶器と違って、樹脂は電機メーカーがノウハウを蓄積する我が土俵。そこに持ち込んで、ライバルの弱点を逆手に取った素材革新で消費者の潜在ニーズを掘り起こした。「便器は陶器しかあり得ない」という常識を覆し、2強の座を脅かした。天晴れである。」(月刊『FACTA』2011年1月号、12月20日発行)

とあります。さすがパナソニックと思いますし、周知の通り家庭の財布は主婦が握っており、その主婦が未来永劫続くと思われた「便所掃除から開放される!」とあれば、シェアトップは約束されたようなものです。このメリットは実は家庭だけではなく、オフィス向けでも便所掃除の人件費の削減など様々な効果が期待でき、家庭用のみならずオフィス向け陶器でもそう遠くない将来にパナ電工の躍進が始まる気がします。

こんな重大な事態に対してTOTOやINAXはなぜ樹脂製に参入しないのかというと、

「アラウーノ発売から4年がたつというのに、なぜ樹脂製で対抗しないのか。そこには歴史的な背景がある。両社とも旧社名の東洋陶器、伊奈製陶が示すように、もともと陶器専門メーカーとして発展してきた。特殊な粘土(カオリン)、石英など天然の鉱物原料を調合し、成形したうえで摂氏1100?1300度で丸1日かけて焼成する大型炉と、焼成後の収縮誤差を頭に入れながら粘土を成形し、焼き上げる職人芸の工員が働く陶器製造工場を自社内に抱えている。便器は陶器製造工場の主力商品であり、これを樹脂製に切り替えることは工場のリストラにつながる。このため、樹脂の良さや強みがわかっていても、おいそれとはシフトできない。陶器を「捨てるに捨てられない」ジレンマだ。」(月刊『FACTA』2011年1月号、12月20日発行)

とのことで、仕事上ももちろんお付き合いの多い両社ですが、やはり「捨てるべきものと捨ててはいけないもの」の判断が出来ない会社は時代から取り残されてしまう事例となってしまうのでしょうか。是非、消費者目線で陶器も住宅部材の聖域ではないという認識で、今後の商品展開に活かさないと、気付いたときには業務用でもシェアを奪われたいたということになってしまうかも知れません。

もちろん個人住宅で使うのであれば私も「アラウーノ」を買って、奥さんを掃除から開放させてやりたいと思います。

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