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07

Oct

2025

NEXUS-情報の人類史-上-人間のネットワーク-ユヴァル・ノア・ハラリ

現代の知の巨人とも言われて久しいイスラエルの歴史学者でもあるユヴァル・ノア・ハラリ氏の最新著作「NEXUS 情報の人類史」を読了しました。本書に先立ってハラリ氏の「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」も読んでいたのですが、ちょうど毎日のように更新されているAI関連の話題が新聞を賑わしている今、タイムリーな内容の著作ではありました。本書の要約や解説は既に無数にWeb上にあるので、特に改めて述べるようなことではありませんが、全体としてAI技術の現状とこのテクノロジーに対する警鐘、今までの人類社会、特に民主主義と全体主義(独裁制)という主要な政治体制の関連性を、情報テクノロジーという切り口で時系列で整理している内容は新鮮でもあり、ある意味驚愕の内容ではありました。

 本書を読み終えた後だと、民主主義も全体主義も所詮は情報テクノロジーの扱いと時代におけるテクノロジーの発展に依存するもので、民主主義が必ずしも人類社会の叡智の結果でないという分析にショックを受けざるを得ません。ただ、ここら辺の主張は至って論理的でハラリ氏個人の主張や意見というよりかは、情報テクノロジーの歴史を分析した結果、必然的に導かれる一つの論理的帰結という内容にある意味納得せざるを得ないところではあります。

 そのような緻密な分析もさることながら、中世の魔女狩りの情報処理レベルと現代のSMSのフェイクニュースのレベルがテクノロジーとその規模やスピードだけは進歩しているものの、情報そのものに対する人類のリテラシーというか知見は何も進歩が見られていないという点に、本当に驚愕というか暗澹たる思いになります。

シンギュラリティはより近く-人類がAIと融合するとき-レイ・カーツワイル

 ハラリ氏のAI観と展望は警鐘の意味も兼ねてか敢えてネガティブな論調になっています(その意図があると本書でも述べています)。先だって読了したレイ・カーツワイル氏の「シンギュラリティはより近く 人類がAIと融合するとき」のような書籍の論調とは真逆ではありますが、現時点ではどちらが正解ということもなく、ハラリ氏自身が述べているように(明るい未来とネガティブなディストピアになりうる)どちらの可能性も深く熟慮した上で必要な対策を今から人類全体で練るということが肝要なのでしょう。

 久しく建設・建築業界は参入障壁が高く、恐らくはその根本にあるのは簡単に言えば「経験産業」の最たるもので、熟練工の必要な現場作業、経験がものをいう現場管理といったところだったとは思います。ただ、昨今のAIが一番得意とすることは何かといえばまさにその「経験」を無限にかつ短時間で習得できるところにあるとすれば、この参入障壁はロジカルに考えれば既に障壁ではなくなっているのが現実の状況です。建物の施工管理は経験が必要ということで、業界では規模に応じて現場作業の見習いから数年かけて規模の小さな所長、大現場の所長と経験を積んでいくのが通例ですが、AIにいわせれば仮想空間で無限通りの施工工程パターンを数時間でシミュレーションして最適な施工方法を選択する、将棋と同じで人間が考えなかったような最適な!?施工工程を編みだすかも知れません。
 論理的な帰結で決まる構造、設備はそうかも知れませんが、デザインと空間認識のセンスが必要な設計分野は最後まで人と思われていましたが、最新のAI事情を見てみるとそれももはや過去の話であるのはいうまでもありません。むしろ、工程と同じで人では限界のあるデザインや空間利用を飛び越えた設計アイデアが出てくるのは容易に想像ができます。
 そしてもう一つの現場施工に欠かせない熟練工も、昨今の人出不足も相まってロボット化が進められている中で、ほとんどの作業が経験値を無限に積めるAIの頭脳に持つロボットが担うことになれば、「AIが考えた斬新な設計アイデアをシミュレーションによる最適工程で自動で指令を受けるロボットが自動で施工する」、こうなるともうIT産業の方が親和性が高いでしょうから、従来のゼネコンの市場は彼らIT大手から見ればブルーオーシャンにしか映らないでしょう。ただでさえ、IT化、DX化が一番遅い業界だった訳ですから、ここに手間取っている限りトップガンマーヴェリックのトムクルーズの名セリフ(少将に言われた「これからは無人機の時代だ。君たちパイロットは絶滅する」に対してマーヴェリックが「そうかもしれません。でも、今日じゃない」と応える場面)ではないのですが、恐らくは来年、5年後は今と同じやり方か延長線上で現場作業は進むのでしょうが、10年後はたまた20年後に同じやり方で建物が建てられるとはとても考えられません。その時の主要プレイヤーが今のスーパーゼネコンなのか、IT企業なのかもわからないといったところでしょう。
 そんなことも想起された本書でしたが、思えば7年前の2017年のブログ記事にGoogle建設(字が間違っていますが。。。)なる記事を掲載していたのを想い出しました。

 当時と比べても、もう想像できなかったようなAIのレベルの早さですから、Googleもそうですが、多くのIT産業がライバルになる日も本当に近づいていると思わざるを得ません。

 ハラリ氏の本書の中に出てくる「無用者階級(AIの出現で労働階級としての必要性もなくなった階級のこと)」に衝撃を受けると共に、自分の仕事ももはや安泰ではないなと改めて思いを巡らせた書籍でした。あと10年後のブログ記事にどんな世界の感想を書くことになるのか、今から楽しみなような怖いような感じです(10年後どこに住んでいるのやらもある意味、想像つかないのですが。。。)。


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