Sun

19

Jul

2026

反転領域-創元SF文庫-アレステア・レナルズ

このところSF小説も好きな作家の作品は邦訳されているものはあらかた読み切ってしまったようにも思えて、秀作と呼べるSF作品を探していたのですが何となく最近のAmazonに表示されるこちらをKindleでポチって最近読了してみました。ネタバレに気を付けつつも購入した経緯がAmazonだったので、何となく書評を読んだ限りでは中世の冒険譚のような導入から始まってラストにかけてどんでん返し!?という予備知識はあったものの、導入部分の中世の帆船での北欧を冒険するエピソードと主人公が船医という設定の話自体もなかなか面白く、道中でほのめかされる「大建築」なるものが恐らくはSFモチーフになるのだろう(異星の遺構か何かみたいな感じで)と読み進めつつ、登場自分の人間描写も細かくて普通の中世の物語としても面白く読み進められます(というところでこの先はネタバレがありますので、未読の方はご注意ください)。

 状況が一変してくるのは、まだ物語の序盤というところで主人公である船医が甲板の事故で敢え無く亡くなってしまうというところからでしょうか。その後、一旦、似たようなシチュエーションで再び船による冒険が継続されるのですが、そこかしこに微妙な変化(確か帆船だったのが蒸気船に代わっていたり、細かいツールが数十年先の技術にアップグレードされていたりなど)がありつつ、リピートされた状況が少し先に進んでいくといった感じです。そして2回目の航海!も「大建築」に上陸したところでまたまた主人公の船医が不意に死亡してしまうシーンで、どうやら時間ループSFものなのかと思いつつも状況とループを重ねる毎に、周囲の登場人物の立ち位置、特に相方!?のような立ち位置のコシル嬢のセリフからどうやら単純なループものでもないなという感じがして、ここら辺でまた先が読めない面白さに期待できます。

 終盤にかけてリアルな世界?と思われる木星のエウロパでの舞台に移るにつれて、主人公であるサイラスの境遇含めて衝撃的な設定が明らかになっていきます。最後のエウロパでの脱出劇はアッという間の感もありますが、この章にAIと人間の感情の軋轢から共感まで、結構なテーマが凝縮されている感があり、濃厚なラストの章となっているかと思います。エウロパでのAIたるサイラスの決断、コシルの立ち位置などあっという間の文章が勿体ないエピソードで物語が終わっていく様は圧巻です。

 そして何よりこの小説自体、作者の人間性が表れている最後のエピローグが本当に素晴らしく感動します。最初のサイラスが夢想!?していたリピートものの内容がこの最後のエピローグに繋がる布石だと思うと、泣かせますし物語の構成自体の絶妙な締めくくりに感動すら覚えます。やはり小説はSFに限らずこのような終わり方が読後感含めて大事だと思いました。

 ダイナミックなエピソードもなく、シンプルなエピソードの構成ですが、過去に似たような感動を覚えたSF書籍としては大分昔に呼んだ「異星人の郷」を想い出しました。こちらもラストが素晴らしく本当に感動しましたが、このような素敵なSF小説を発掘!?して邦訳してくれ続けている創元SF社にまたまた感謝です。

 SFファンのみならず読後感のよい小説を読んでみたい方は、是非お勧めの一冊です。

本作品の評価:4

この記事をシェアする

ディスカッション

コメントはまだありません

コメントはお気軽にどうぞ

※メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。


CAPTCHA


This site is protected by reCAPTCHA and the GooglePrivacy Policy and Terms of Service apply.

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

”ところによりエンジニア”