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Sep

2023

輝石の空 〈破壊された地球〉三部作 (創元SF文庫)

ちょっと前にAmazonのKindleで購入はしていたものの、途中で止めていた完結編ですが、ようやく読了しました。例によって初刊から少しとっつきにくい語部調の文体と誰が何をどの立場で喋っているか(語っているのか)すぐには分からない二人称、三人称で決して読み易い小説ではないと思います。それでもついつい謎の答えが知りたくて読み進めていき、この完結編の途中からは一気に読んでしまいました。
 最初から完全に別宇宙の地球のファンタジーとも読み取れる舞台が、実はリアルな地球の未来でもなくはなさそうな設定とハードSFでありつつも魔法的なファンタジー?(特に地球が意志を持つ存在?)でもある設定は、最後までSFよりかファンタジーよりかは分からずじまいです。それでも全体として小説として崩れていないのは、やっぱり主人公の女性であるナッスンを中心に描かれている人間性のドラマがしっかりしているからだと個人的には感じています。

 それでもこれだけ癖のある文体とSFなのかファンタジーなのかあいまいな境界線の本書は読み手を選ぶというか、評価が分かれる作品であることは間違いないと思います。そんな本書ですが、数年かけて発刊された三部作を正直なところ待ち侘びたという感もなかったのですが、最後まで読ませるところは立派にSF賞を総なめしている力作の証なのかと思います。

 地球の地殻を操れるエスパーたるオロジェン(ロガ)の存在とその差別的な立ち位置、最後にそれらが起因して月を取り戻すか世界を石喰いたる亜人間に変えてしまうかの争いは、最近流行った日本の漫画の一つ「進撃の巨人」のモチーフに通じるところもあり、人間社会の業をきちんと描き切っている物語でもあります。最終巻で明らかになるオベリスクのハイテクとしての存在意義とオロジェンが生まれた謎なども、伏線がきちんと回収されつつ、現代の地球に通じる人類の課題を網羅しているところで、高い評価を得ているのは納得できます。

 読者の評価を分けている読みにくい文体と二人称(三人称)も、物語を単純化させない表現かと思えば納得できるのではないのでしょうか。恐らくは二度三度と読み返すとより味わい深い作品となるのは間違いないのですが、読みたい本が順番待ちしている現状では、読み返す機会はしばらく先になりそうです。それでも読後感の面白さとSF(ファンタジー)としての世界観の設定の緻密さは読んで間違いない傑作かと思います。

 本書の著者であるN・K・ジェミシン女史の長編処女作とのことですが、是非次回作も期待したいと思います。

本作品の評価:4

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