Wed

06

Sep

2023

宇宙の孤児 (ハヤカワ文庫 SF 281)

8月の終盤に日本に帰省した際にAmazono古本で事前購入していた本書ですが、ほぼ帰省している間に読了してしまいました。言わずと知れた!?SF界の巨匠の一人であるロバート・A・ハインラインの古典とも言える作品ですが、1978年刊行とのことで、恐らくは一番最初に読んだのは遠い昔の小学生頃に児童書のバージョンで読んだおぼろげな記憶があります。当時は世代宇宙船などという言葉も概念も知らなかった年齢ですが、はるかな宇宙の時空の中で、宇宙船の船員が世代を重ねるにつれて自分たちの世界が宇宙船の中だけが全てという思考になって、宇宙船の中で生まれた奇形のミュータントと敵対していくという設定は、子供ながらに興味の尽きない未来の可能性の一つとして面白くも怖さのあるストーリーとして読んでいた記憶があります。

 実はこれだけ長い年月でしたが、結末はおぼろげながらも覚えており、主人公が最後に最初の人類の乗員の目的でもあった他星系の惑星に数人の仲間と降り立つところで終わります。正直なところ、光速を超える速度の乗り物などは今の人類では考ええない空想になってしまうのですが、この世代宇宙船は理屈上は今のテクノロジーでも実現できる可能性が高い手段です。一方でこのテーマの共通の成り行きではあるのですが、まさに世代を重ねるに連れて本来の目的が希薄になって、宇宙船という内部だけが世界のすべてになってしまうという、人類の知識と社会の伝承というのは簡単ではないのだなと思い知らされてしまいます。

 確かに地球上に住んでいてもこの数千年でこれだけの社会システムの変化があったことを考えれば、宇宙船のような閉鎖空間で、数世代も重ねればどんな社会システムに変化していくかなど想像も尽きませんし、そういった意味では人類が世代宇宙船の中で退化していくパターンはある意味、定石なのかも知れません。

虚空のリング〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)虚空のリング〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 このスティーヴン・バグスターの「虚空のリング」も名作だと思いますが、すっかり古典の部類なのでしょうか。こちらも是非読み返してみたいと思います。「宇宙の孤児」も古本でないと入手できないようですが、興味のある方は手に取って損のないSF名作かと思います。

本作品の評価:4

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