Mon

09

Oct

2017

脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち

マニラ駐在時に読んだ「困窮邦人」と同じ著者の水谷竹秀さんのノンフィクションで、いわば続編にあたる位置付けの本です。内容もちょうど自分が駐在していた2013年を中心に取材されているようで、なんとなく臨場感があります。前作は題名の通り、フィリピンに渡って困窮してしまった邦人に焦点を当てていましたので、基本は経済的に大変な事になってしまった方が中心でしたが、本作は似たようなに困窮した方も出てきますが、それだけではなく、経済的な尺度ではなく実に多様な理由がある邦人が登場します。
 そんな方々のインタビューを中心に前作と同様に日本国内での取材も丁寧になされていて、裏付けやそこに至ったまでの経緯に説得力のある文章になっています。本作では更に踏み込んで、これらから浮かび上がる日本の高齢者問題の現状をきちんと浮き彫りにしているところが大きな違いでしょうか。何度も出てくるキーワードに「フィリピンには老人施設が存在しない。何故なら子供が親の面倒をみるのが当たり前だから」というものがあります。将来的には、フィリピンもそれだけではなくなる可能性は示唆しているものの、現状ではこの差が日本との大きな違いとしてのフォーカスされています。
 そんな中で、最後トピックスとして登場するセブ島で孤独死した高齢の女性の話が出てくるのですが、著者が生前の足取りを日本から順に辿っていく中で明らかになるこの女性の半生を考えると、言いようのない寂寥感を感じざるを得なくなります。この女性がセブの前に住んでいた場所がなんとバコロドであったりと、自分も実際に訪ねた場所も出てきて何とも言えない現実感を感じました。そして、この女性が最後の地に選んだ「美しき島」が日本ではなくフィリピンだったことを思う時、日本の高齢者の孤独(死)の問題が読者には重い現実としてのし掛かってくる感じです。
 今回の題名だけからですと「脱出老人」という日本を捨てた印象しか受け取りませんが、実際には日本を捨てざる得なかった複雑で深刻な日本の高齢者問題について考えさせられた書籍でした。


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