Wed

07

Sep

2011

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

題名から想像する映画のエイリアン2のような孤立した惑星で繰り広げられるエイリアン遭遇物語かなと思い読み始めましたが、なかなか予想を裏切られる筋立てでした。最初に遭難した宇宙船を調査しに無人の惑星に宇宙船が来るところまでは、予想通りの展開でどんなエイリアンが相手かと楽しみに読んでいました。ところが、読み進めるうちに相手であるエイリアンが見えないどころか、実は生き物であるエイリアンよりもっと手強く厄介な相手であるということが分かります。説明では数百万年の進化を遂げた異星人のロボット達の子孫という種明かしなのですが、それらを相手に戦う船長や仲間を失いつつも惑星に残り続けることに疑問を抱く主人公の副長などの人物描写が丁寧で、単なるSF小説に終わっていないところが読みごたえがあります。


特に明確な意思を持たず本能で探検隊である人類を攻撃する無機質なロボットは、通常のエイリアンより恐ろしいものがあります。一番印象に残ったのは、このロボットの慣れの果と不毛な戦いを続けることに疑問を持ち始めた主人公が、広大な宇宙の中で人類がまだまだ理解を超えるものがあるという謙虚さを持つべきだという認識に至る過程と、不毛ないち無人惑星の調査(征服)にこだわり続ける人類の固定観念に気付くところでしょうか。現代の地球における人類と自然との対峙に置き換えても十分に通じる警笛です。作者であるスタニスワフ・レムが一番言いたかったところだろうと思います。同じ著者の作品である「ソラリスの陽のもとに」も買ってあるので、今から読むのが楽しみです。


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