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2026

プロジェクト・ヘイル・メアリー-上-アンディ・ウィアープロジェクト・ヘイル・メアリー-下-アンディ・ウィアー

ちょうど映画化されたようでライアン・ゴズリングが宇宙船の中で浮遊しているポスターがあちこちにネット上で溢れていた最中ですが、原作も秀作ということで早速読んでみました。主人公がとある宇宙船の中で記憶が欠落した状態で目覚める導入シーンから、よくある冷凍睡眠の記憶が混濁した覚醒シーンなのだろうと思いきや、交差する現在の宇宙船の中でのエピソードと、過去であろうと思われる地球でのエピソードが交互に展開する中で、話が進むにつれてどうやら地球がアストロファージと呼ばれる宇宙微生物?(この発送がなかなかSF的でありながら、恒星間宇宙船を可能にしたツールともなっており、本当によく練られています)によって太陽が侵食されて地球に氷河期が急速に訪れるであろうという危機的な展開が明らかになってきます。
 どうやら主人公は宇宙船に乗り込む前に、このアストロファージの発見と解明に少なからず貢献したというか、プロジェクトに巻き込まれていった中学教師ということが判明してきます。そんな展開が進むにつれて、なぜ冒頭の主人公が一人で恒星間宇宙船の中で目覚めて(3人いたクルーのうち同僚の2人は冷凍睡眠の失敗で既に亡くなっていることが明らかになります)そして、アストロファージの探査に乗り出すことになったのかが徐々に地球の過去エピソードのパートから明らかになっていく展開です。

 そして地球の危機を救うアドベンチャーSFかと思いきや、探査に来たタウ星系で偶然にも他の恒星から同じようにアストロファージの探査に来たと思われる全く姿形も文化も進化の形態も異なる異星の知的生命体に遭遇するあたりから、本書の本当のテーマとも言える異星人(ロッキーという同じように23人いた他のクルーは死亡してしまってただ一人生き残った異星人)との遭遇と交流が、共通の目的であるアストロファージの探査というテーマで結び付き進んでいきます。

 宇宙船の中で自分の立場や乗り込んだ経緯がよく分かっていない(記憶喪失?)のグレースが、徐々に記憶を取り戻しながら地球での過去のいきさつや宇宙船でタウ星系まできた目的を想い出しながら、目的を達しそうになりつつも最後に異星人であるロッキーとの友情を選択する(といってもありきたりのものでもなく、本当に生死を掛けた選択というところで感動があるというところでしょうか)ラストの方の展開まで一気に読めてしまいます。

 この異星人ロッキーなのですが、本当に異星人!?で姿かたちはおろか知覚も生存条件も人類とは根本的に異なるという設定で、むしろこの先どこかで知的異星人と遭遇する日が来るとなると、実際にはこれぐらい違う生物になるのだろうなというところでは、こちらの方がリアルに感じなくもありません。共通言語となる物理の理解も、知覚がこれだけ異なって発達すると、相対性理論に気付かなかったなど思わぬキーポイントがあるのですが、裏返すと我々が気付かない謎の物理法則も案外こういった知覚の盲点の裏にあるのかも知れません。

 物語のラストは主人公のグレースは結局地球には戻れずとも何とも言えないハッピーエンドで、彼が中学教師だったという設定の伏線も最大限に生かしつつ素晴らしいラストだと思います。ここら辺、テーマは壮大だけども主人公は異星人のロッキーとグレースのほぼ二人で展開し、最後は意外なハッピーエンドという従来のハードSFとは一線を画したSFでありながら至高のストーリーと言えるのではないでしょうか。

 映画の方も配役も素晴らしいですし、是非どこかで観てみたいと思います。

本作品の評価:4.5

 


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