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Jul

2019

異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)異星人の郷 下 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

正直、読み始めは非常に取っ付き難く、と言うのも文体がとてもSFとは思えない昔に読んだ「薔薇の名前」のようないかにも中世の物語(本の帯見出しが中世のファーストコンタクトと謡っているので当然だったのですが)と言った趣きで始まっているからでもあります。この「異星人の郷 上 はネットのSF評価で面白そうだったので去年の帰国時に購入していたものの、ちらっとページを開いたものの前述のように取っ付きにくい文体もあって読む気がしていなかったのですが、夏の帰省を前に読む本(正確にはSFが尽きてしまったので)半ば仕方なく読み始めたと言う感じでした。それでも実は一度読み始めて挫折したのですが、つに読む本もなくなり暇つぶしにと読み始めたのですが、上下巻の上巻が終わる頃には下巻を待ちきれないように一気に読みきってしまいました
 導入部分は前述の通り中世(のど真ん中?後半?である14世紀あたり)のドイツの田舎町にある教会の司教であるディートリヒの日常から始まります。これらが何とも取り付き難い印象を受けるのですが、読み終わって全て導入部の中世の小村の様々な人物像も伏線の一つだったと後で分かります。早々に異星人であるクレンク人の宇宙船が難破して、主人公であるディートリヒ神父の手助けを借りながら船を修復し始める異星人と中世の村人との関わりが物語の主軸として進んでいきます。その中で、この小説が秀逸なのは中世のヨーロッパにおけるキリスト教の宗教観と村人の生活をあくまでリアルに描きつつ、そこに異星人が入り込んだ日常を違和感なく描いているところでしょうか。実際に異星人も人間に近い生物ではなく、物語の中でバッタと呼んでいるように昆虫に近い生き物が進化した姿と社会を示唆しながら、中世の人類との溝を赤裸々に描いていきます。その中で中世らしい臨場感を与えているのは、あくまでリアルなキリスト教の存在感と村人の実生活の描写、ヨーロッパが当時局面していた貴族諸侯の戦争かと思います。
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