映画と書籍と文化

Sat

14

Mar

2020

中国発の衝撃SF大作「三体」

三体

この「三体」ですが、去年の暮れからずっと読みたくて年明けに遊びに来た親戚にわざわざ持ってきてもらった書籍の一つです!文庫本ではなくハード装丁で重かったようで申し訳なかったのですが、内容も期待通りの重厚さのある面白さでした。中国読み物らしく!?いきなり文化大革命の凄惨なエピソードから導入されるあたりは、SFらしからぬ感じがしますが、文革で命を落とす主人公の少女の父親が著名な天文の理論物理学者というところから、なにか宇宙に関連するSFを期待させる展開を感じさせます。その後、文革で波乱万丈の生涯を余儀なくされる少女の人生を辿る形で展開される物語は、やがて天体物理学を修める少女が文革の最中でも別世界的に隔離されている巨大なアンテナ基地である紅岸基地へ招聘されるところから、SFチックな展開が増していきます。その紅岸基地の真の目的が地球外生命体とのコンタクトというところまでは、何となくお決まりの展開とも言えますが、実際にはアンテナ程度では隣の恒星である四光年先にも届かないことなど、ハードSFを思わせる検証に基づいてやがて衰退していくプロジェクトとなるのですが、そこは実はとんでもない事実が現代の別の主人公であるナノテクノロジーの応用研究者の目線から辿っていくことで明らかになっていきます(この先はネタバレですので、未読の方はご注意ください)。
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Sun

01

Mar

2020

久し振りの天体望遠鏡BORGで月面観察!

もう一つの隠れた趣味!というほどではないのですが、海外駐在以来、ずっと持ち歩いている天体望遠鏡(後述のBORGというブランドです)を久し振りに覗いてみました。この天体望遠鏡ですが、記憶が間違っていなければ社会人になった年に取得した一級建築士の合格祝いに両親に買ってもらったもので、今に思えば薄給とは言え社会人になっていたのによくも親に買ってもらえたものだと呆れてしまいますが、それだけ欲しかったということなのかと思います。天体望遠鏡自体は小学生の頃に親戚の人からもらった古いものを一つ持っていて、鏡筒や赤道儀なんかは確か錆が酷くてほとんど使い物にならなかったような記憶もあります。かと言ってかれこれ既に二十数年前に買ってもらったこの天体望遠鏡を活用していたかというとそんなこともなく、社会人の忙しさにかまけて、ほとんど眠っていたような感じでした。
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Fri

28

Feb

2020

高機能トイレ!ドイツの自動回転する便座

少し前にドレスデンへ旅行に行った際にかみさんと親戚からドライブインに便座が自動で回るトイレがある!と話していたのを聞いていたのですが、その時は何のことだろうかピンと来ていませんでしたが、ドイツのデュッセルドルフのモールの有料トイレでとうとう見つけてしまいました!一体便座が自動で回るというのはどういうことかと、なかなか想像つかないものですが、目の前で実際に動くのをみるとなかなか衝撃的です。
 高機能トイレといえばウォッシュレットをはじめとした、便座が自動で開くなど日本の独壇場かと思っていましたが、ウォッシュレットこそ普及していないヨーロッパですが、なんと便座を自動で洗浄してしまうトイレがあったというのは驚きです。
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Sat

28

Dec

2019

異色のダークモダンホラーSF「鼻」

   鼻 (角川ホラー文庫)

この本はAmazonの書評で「終わりに希望はないがどんでん返しが魅力」的なコメントが多かったので、それにつられて購入しておいたものです。暇な時に読もうかと思い、年末年始休みに何となく読んでみたら、内容に引き込まれて一晩で読んでしまいました。項数も薄く、表題作の「鼻」を含めて3つの短編が収録されている短編集なので、まああっという間には読めてしまうのですが、この著者の曽根圭介さんの構成力と行間に見られる筆力と言うか、独特の世界観の構築力には思わず引き込まれずにはいられないといった感じです。確かに3つの短編全てで、ラストの絶望感というか不条理な結末はなんともいたたまれない感じなのですが、想像していたよりかは普通に!?読むことが出来ました。というか、予想していたような読了後の不快感のようなものは全くなく、むしろこれらの独自の世界観から導かれる何とも諦めるしかないような“痛い”結末という感じでしょうか。なかなか読んでみないと分からない感覚ではあります。
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Wed

18

Sep

2019

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)

この本もSFの中では比較的有名な著作で以前から知っていたものの、手に取って読み始めたのは今回が初めてとなりました。表題作の「たったひとつの冴えたやりかた」を含めた3作がオムニバス的に収録されており、その3作共に遥かなる未来の異星人の司書が若いこれまた異星人のカップルに太古の昔のヒューマンと呼ばれている人類のエピソードを紹介する形で、この3話がエピソードとして収録されいている形です。
3話とも時代背景(といっても主人公の少女が誕生日に宇宙船をもらうような遥かな未来?)とテクノロジーは同じ時期のようで、人類が使っている宇宙航行手段や通信手段(この通信手段の「カプセル」が全体の物語にキーを与えているのですが)は共通なものとなっています。最初の表題作は主人公の16歳の少女の一人称で進んでいくので、これまたハードSFばかりを読んでいた最中でこの著作を読むと違和感があるのですが、ファーストコンタクトものとして秀逸なばかりか、寄生体である異星人と少女との意気投合と冒険、そして確かにハンカチなしでは読めない?という感じのラストと物語としても一気に読めます。その中で、今の現代よりは相当な未来のSFなのですが、書かれた時代背景もあるのか通信手段はカプセルという昔の航海時代を彷彿とさせる方法を取っているところにポイントがあります。単なる小道具かと思いきや、この通信手段であるカプセルの内容を時間差を置いて主人公や登場人物が状況を把握するところに、3話共通なのですが聞き手の想像や臨場感を与える重要な役割を果たしていると思います。
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Thu

29

Aug

2019

夏休み前に読了していた「パインズ―美しい地獄―」の続編を帰省時に購入していたので、早速読んでみました。2部目にあたるのが「ウェイワード―背反者たち―」で完結編の3部目が「ラスト・タウン (―神の怒り―)」です。「パインズ」のラストがある意味、これ以上はない!?という驚愕の事実で終わり、主人公も落ち着くところに落ち着いた感じだったので、ここからどうやって物語を展開していくのか興味半分、不安半分で読み始めたものの、結論から言うと2作とも1作目のテイストである読者の想像を超えるラストという持ち味を裏切らずかつ、SF三部作として非常に面白かったと言えます。2冊とも正直、夜なべして寝るのを惜しんで読んでしまいました。
 幻想とも生き地獄とも言える町パインズの保安官に無事に?収まった主人公のイーサンパーグでしたが、二作目の「ウェイワード」は冒頭から町の秩序を揺るがしかねない事件から始まります。イーサンがその捜査を担当する過程で、町を仕切るピルチャートその右腕のパムの存在感と意図が明らかになっていく過程はなかなか見ものです。二作目の本作は一作目の秘密のネタでもあった機能停止に前の世界との繋がりも描写されています。
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Thu

15

Aug

2019

新海誠監督の最新作!「天気の子」

という訳で、せっかく日本に滞在していますので新海誠監督の最新作である「天気の子」を上の息子と一緒に観てきました!国内外で超ヒットしてしまった!?「君の名は。」の次作ということで、興行的にも内容的にも前作を超えるプレッシャーがある中でどんな作品になるのかというのは本当に楽しみでもあり一抹の不安もあった中、観終わった結論から申し上げますと素直に映画として2時間楽しめた日本アニメ映画というのは間違いなかったかと思います。
 新海誠の作品との出会いはたまたま観たアニメ「雲の向こう、約束の場所」とそれに引き続き観た「秒速5センチメートル」という作品でしたが、どちらもメガヒットする作品というよりかはインディーズのような好きな人が観るアニメ!?というジャンルの匂いがしていました。そんな中で、秀逸だったのは日常の風景でも気を抜かない綺麗を通り越した風景描写と構図だったかと思いますが、今回の「天気の子」では「君の名は。」でも目を引いた隕石の落下シーンをはるかに凌駕する雲と雨の空の描写と東京の風景、花火シーンなどはもはや一つの美術作品のようでこれだけでも映画館でうっとりと見惚れるに値するのではないでしょうか。映画を観ていた日はたまたま台風10号の上陸もあり、雨天と曇天が入り混じった何とも言い難い天気で、それもあって臨場感も増した感じです。
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Mon

29

Jul

2019

異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)異星人の郷 下 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

正直、読み始めは非常に取っ付き難く、と言うのも文体がとてもSFとは思えない昔に読んだ「薔薇の名前」のようないかにも中世の物語(本の帯見出しが中世のファーストコンタクトと謡っているので当然だったのですが)と言った趣きで始まっているからでもあります。この「異星人の郷 上 はネットのSF評価で面白そうだったので去年の帰国時に購入していたものの、ちらっとページを開いたものの前述のように取っ付きにくい文体もあって読む気がしていなかったのですが、夏の帰省を前に読む本(正確にはSFが尽きてしまったので)半ば仕方なく読み始めたと言う感じでした。それでも実は一度読み始めて挫折したのですが、つに読む本もなくなり暇つぶしにと読み始めたのですが、上下巻の上巻が終わる頃には下巻を待ちきれないように一気に読みきってしまいました
 導入部分は前述の通り中世(のど真ん中?後半?である14世紀あたり)のドイツの田舎町にある教会の司教であるディートリヒの日常から始まります。これらが何とも取り付き難い印象を受けるのですが、読み終わって全て導入部の中世の小村の様々な人物像も伏線の一つだったと後で分かります。早々に異星人であるクレンク人の宇宙船が難破して、主人公であるディートリヒ神父の手助けを借りながら船を修復し始める異星人と中世の村人との関わりが物語の主軸として進んでいきます。その中で、この小説が秀逸なのは中世のヨーロッパにおけるキリスト教の宗教観と村人の生活をあくまでリアルに描きつつ、そこに異星人が入り込んだ日常を違和感なく描いているところでしょうか。実際に異星人も人間に近い生物ではなく、物語の中でバッタと呼んでいるように昆虫に近い生き物が進化した姿と社会を示唆しながら、中世の人類との溝を赤裸々に描いていきます。その中で中世らしい臨場感を与えているのは、あくまでリアルなキリスト教の存在感と村人の実生活の描写、ヨーロッパが当時局面していた貴族諸侯の戦争かと思います。
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Sun

09

Jun

2019

海外ロボットSF「巨神計画シリーズ」

巨神計画 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

こちらも元々は暇つぶしで古本屋で購入した最初の「巨神計画」を読んだのが、春先だったのですが、意外な⁈面白さについKindleで続編の「巨神覚醒」まで読み進めてしまいました。そして例によってこれも3部作構成で、最後の「巨神降臨」は発売日を待ちつつ、すぐにKindleで購入して一気読みしてしまいました。全編を通しての主人公は、子供の頃に偶然にも巨神(巨大ロボ)のパーツの一部である手を発見した女性の科学者なのですが、彼女を中心としてパイロットであるカーラとヴィンセント、続編からは彼らの子供であるエヴァを中心に話が展開していきます。そして、前半を通して重要な役回りを演じているのが、前半の物語の語り手でもあるインタービュワーと呼んでいる謎の高官?です。
 このシリーズの特徴的なところが、全編を通じてストーリーがいわゆるインタービュワーによる聞き取り記録や、ある時にはある人物の手紙、通信記録などで構成されていることで、これは前に読んだワールドウォーZに似ている形式とも言えます。もっとも形式については、もっと変化に富んでいるので、読者にとってはニュースや後日の記録を読みながらそれでいて臨場感一杯の構成と、話の背景まで途切れずに理解できているのは、作者の文章力と構成の秀逸さがでているところかと思います。
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Tue

30

Apr

2019

改めて想う震災被害「津波の霊たち」

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語

早いもので東日本大震災から8年が過ぎてしまいましたが、随分前に日経新聞の書籍評にあったこの本を最近ですがKindleで購入してから、一気読みしてしまいました。ちょうど時期も震災の3.11を過ぎたあたりではあったのですが、改めて震災被害の何たるかを(ある一側面ではあるものの)思い知らされた感じです。この書籍ですが、実はロイド・パリーという在日歴が長いものの外国人である英国人の記者によるものです。そして全編を通じてクローズアップされているのが、震災被害でも未曾有の悲劇となった大川小学校の遺族を中心に、震災後のいわゆる「霊」にまつわるエピソードと織り交ぜて進んでいきます。ただし、もちろん震災の怪談というものではなく、日本文化でもある祖先の霊を祀るという背景を掘り下げつつ、大川小学校の遺族達を追うことで、震災被害の深淵さと遺族にとって終わらない震災被害を外国人の目ならではの客観性を保ちつつ、冷静に我々に訴えかけてくれる秀逸なルポタージュといえます。
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Sun

31

Mar

2019

パインズ ―美しい地獄―

こちらのパインズも年末年始の帰省時に購入しておいた書籍の一つですが、実は書評でミステリアスなシチュエーションでラストのどんでん返しがあるということで、非常に楽しみに読み始めました。導入はアメリカのとある田舎町で主人公が交通事故から目覚めるところから始まります。そして、その田舎町であるパインズから外部との連絡が取れず逆に外部からも彼の消息が掴めなくなっているというのが、町の中からと外からの描写で進んでいきます。ここら辺、何か昔に観たようなドラマのシチュエーションでもあるのですが、途中で何やら違うぞというのが、同じくパインズから出られなくなり潜伏しているもう一人の女性が主人公とは違う時間軸ということで、何やら時間の進み方がおかしくなるという要素もあるのが示唆されます。そんな中で、その女性と脱出を試みる過程で、脱出者を血祭りに上げるといういびつな町の秩序から、カルト集団なのかという示唆もあり、本当にこの町の存在や外部との関りがさっぱり予想できずに進んでいきます。
 そして、とうとう主人公が町と外部とを隔てるフェンスに辿り着くにあたり、高圧線で外部と遮断されている境界が明らかになり、やっぱりこの町は何らかの目的で意図的に隔絶されているのが分かってきます。それでもこのパインズの意図が分からないまま進むのですが、周囲を崖で囲まれている町から脱出する際に崖を超える逃避行の中で、得体の知れない怪物が出てきて、主人公はそれらとも闘いながら逃避行を続けます。その怪物の存在が、これまた現代の常軌を逸しており、SF要素を予想させつつ最近見た三部作映画のメイズランナーのようなシチュエーションなのかとも予想させます(結果的にこの予想が大分近い予想ではあったのですが。。。)※ちなみに「続きを読む」で結末に触れていますので、この楽しいSFの読書の楽しみを取っておきたい方は、先に本書を読むことをお勧めします!
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Thu

28

Mar

2019

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

日本人作家のSF小説は先日に読了した伊藤計劃の虐殺器官とハーモニー以来ですが、例外はあるものの総じて洋書の方がコンテンツは多いのかと思っていましたので、ほとんど期待しないで読み始めました。結論からいうと、期待を大きく外してくれて!?とてつもなく面白いエンターテイメントSFでした!日本のSF作家と言えば不動の大家である小松左京を始め、ショートショートの星新一など秀逸な方々がいる反面、昨今のハードSFでは量と質共に海外に負けている感がありました。
 そのように感じていた中で、このオービタルクラウドですが、小説の構成としては各人物の各シチュエーションで細かく分かれてる現在進行形で、これは作者の力量がないと散漫で収斂しないで終わるパターンもあり個人的にはあまり好きな構成ではありません。ましてや邦書のスピード感でまとまるのかと心配でしたが、読み始めたら一気に最後まで読了してしまいました。
 まず主人公がまだ20代と思しきフリーのITエンジニアで、いわゆるITベンチャーの卵である若者というところからして、現代のシチュエーションだなと感じます。そんな主人公がどうやって宇宙の軌道の一大事件と関わるのか、詳細は読んでのお楽しみですが、本当にテンポよく無理なくストーリーが展開していくところが、この著者の真骨頂だと思います。
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