映画と書籍と文化

Sat

04

Jul

2020

前回の「三体」のラストから四世紀後に訪れる異星人の侵略という事態にどのような物語が展開されるのか、正直全く想像もつかない中で読み始めた続編の「三体Ⅱ黒暗森林」でしたが、読後の感想というか感嘆になりますが、ここ最近のSFでは最高に面白かったと間違いなくいえると思います。前作もそうでしたが、読みなれない中国発の本格ハードSFということで、登場人物の中国名がなかなか頭に入ってこないという唯一の難点はさておき、今回も前作と同様に中国人の主人公である羅輯(ルオ・ジー)が、世界で4人だけが選ばれた面璧者という三体人へ唯一人類が対抗し得うる「思考力」たる頭の中だけは筒抜けになっていない点を逆手に取った戦略である対抗策である人材に選抜されるという奇想天外な幕開けで始まります。
 それでも冒頭の前回の主人公たる葉文潔から“宇宙社会学の公理”のヒントを託される場面と、彼が面璧者に得ればれた理由でもある三体文明の過剰!?な反応の伏線が、最後の最後まで引っ張っていく重要なポイントとなっています。(この先はネタバレですので、是非この稀有な傑作SFを未読の方は読まないことを強くお勧めします!)
≪ フェルミのパラドックスの解!「三体Ⅱ黒暗森林」 ≫の続きを読む

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Sat

02

May

2020

時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス)

しばらく振りですが物理学の文芸書!?とも言える本書を手に取ってみました。宇宙論や物理の本に興味があるといっても仕事や勉強で物理を使うような場面はないため、(一応、理系なのですが)文系の方々と同じようなスタンスで読める本でないととても手を出せないという前提があります。そんな方々にも十分読める本書は例によって数式などは一つも使わずに難解な?物理の解説を試みている書籍といえます。内容はタイトルにある通り「時間」についての物理学的なアプローチからの解説書になるのですが、一年以上前に読了した「時間とはなんだろう」と比べてもかなり進んだトレンドの内容になっています。
 当時に「時間とはなんだろう」を読了した後はだいぶ「時間」の正体に近づいていると感動したものですが、本書を読むとそもそも少し前まで(一般人たる)自分にとっては最新!の宇宙論、物理学だと思っていた内容が既に古典的な理論として紹介されています。具体的には相対性理論はともかくとして、量子論そのものも古典的な解釈と最新のトレンドたる「場」の考えから考える量子論があるということで(よく理解していないので、違った理解かも知れませんが)、ここら辺からして大分、今まで読んできた書籍と内容が違うなという感じです。
≪ 場の量子論の入門書「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」 ≫の続きを読む

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Sat

11

Apr

2020

コンテイジョン-Contagion

今となっては遠い昔のようにも感じますが、何度も飛行機に乗っていた2,3年前に機内で観たことがあります。今回改めてAmazon Primeで借りなおして(字幕版でなんと199円!)改めて観てみました。当時も出演している豪華な俳優陣(マット・デイモンジュード・ロウローレンス・フィッシュバーン)の割には地味な映画という印象でしたが、特に起伏もなく淡々とパンデミックが起きたとしたらという視点で進んでいくストーリーは、今まさにパンデミックの最中に観るとなんとも背筋が寒くなるものがあります。映画では香港が発生源になっていますが、今回の中国の武漢の発生源とオーバーラップしており、グローバル化と相まっていとも簡単に世界中にウィルスが蔓延していく様は本当に今年のこの事態をシミュレーションしたかの如くです。
 スタートのテロップがDay2というのが一瞬タイトルのクレジットと合わせて見忘れたのか!?と思わせるのですが、映画のラストでその謎が解けます。そのままDay3,4,5,・・・164と年末に向けて半年以上の世界情勢を追える進行は、ドキュメンタリーをみているかのような錯覚をおこしますが、年明けからの今日の状況と酷似しているのもソダーバーグ監督の綿密な取材の賜物なのでしょうか。実際の機関であるWHOやCDCの登場人物が軸になっているところも映画の中では臨場感がありましたが、今日の存在感の薄さを考えるとなかなか現実はこのような専門機関が活躍する余地が少ないということでもあるのかと妙なところで納得したりもさせられます。
≪ コンテイジョン-Contagion ≫の続きを読む

Wed

08

Apr

2020

復活の日 (角川文庫)

日本でもとうとう緊急事態宣言が発令されましたが、こちら欧州は既に各国がそれぞれに色々な宣言や対策を実行済みなのは周知の通りです。私個人の状況はというと、先月の第二週目にいつも通り!?週末を駐在先のポーランドで過ごすために出張先のオランダからドイツ経由で戻ったまでは良かったものの(もっとも既に戻る時点で隣国のチェコは入出国制限が発動されており、ポーランドも時間の問題ということで、週明けの戻りの時には、長期滞在用の荷造りをしなければとは考えていました)、いざヴロツワフについてみると飛行機で移動している間に、ポーランドも入出国制限が発令されており、次の日の土曜日の深夜である日曜日からは外国への飛行機が制限されるとのことでした。万事休すかと思いましたが、なんとかヴロツワフ発のオランダのエイントホーヘンという空港への直行便を捕まえることが出来て、一晩で滑り込みでオランダに戻ってこれたという次第です。
≪ コロナ禍の欧州から「復活の日」を思い出す日々 ≫の続きを読む

Sat

14

Mar

2020

中国発の衝撃SF大作「三体」

三体

この「三体」ですが、去年の暮れからずっと読みたくて年明けに遊びに来た親戚にわざわざ持ってきてもらった書籍の一つです!文庫本ではなくハード装丁で重かったようで申し訳なかったのですが、内容も期待通りの重厚さのある面白さでした。中国読み物らしく!?いきなり文化大革命の凄惨なエピソードから導入されるあたりは、SFらしからぬ感じがしますが、文革で命を落とす主人公の少女の父親が著名な天文の理論物理学者というところから、なにか宇宙に関連するSFを期待させる展開を感じさせます。その後、文革で波乱万丈の生涯を余儀なくされる少女の人生を辿る形で展開される物語は、やがて天体物理学を修める少女が文革の最中でも別世界的に隔離されている巨大なアンテナ基地である紅岸基地へ招聘されるところから、SFチックな展開が増していきます。その紅岸基地の真の目的が地球外生命体とのコンタクトというところまでは、何となくお決まりの展開とも言えますが、実際にはアンテナ程度では隣の恒星である四光年先にも届かないことなど、ハードSFを思わせる検証に基づいてやがて衰退していくプロジェクトとなるのですが、そこは実はとんでもない事実が現代の別の主人公であるナノテクノロジーの応用研究者の目線から辿っていくことで明らかになっていきます(この先はネタバレですので、未読の方はご注意ください)。
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Sun

01

Mar

2020

久し振りの天体望遠鏡BORGで月面観察!

もう一つの隠れた趣味!というほどではないのですが、海外駐在以来、ずっと持ち歩いている天体望遠鏡(後述のBORGというブランドです)を久し振りに覗いてみました。この天体望遠鏡ですが、記憶が間違っていなければ社会人になった年に取得した一級建築士の合格祝いに両親に買ってもらったもので、今に思えば薄給とは言え社会人になっていたのによくも親に買ってもらえたものだと呆れてしまいますが、それだけ欲しかったということなのかと思います。天体望遠鏡自体は小学生の頃に親戚の人からもらった古いものを一つ持っていて、鏡筒や赤道儀なんかは確か錆が酷くてほとんど使い物にならなかったような記憶もあります。かと言ってかれこれ既に二十数年前に買ってもらったこの天体望遠鏡を活用していたかというとそんなこともなく、社会人の忙しさにかまけて、ほとんど眠っていたような感じでした。
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Fri

28

Feb

2020

高機能トイレ!ドイツの自動回転する便座

少し前にドレスデンへ旅行に行った際にかみさんと親戚からドライブインに便座が自動で回るトイレがある!と話していたのを聞いていたのですが、その時は何のことだろうかピンと来ていませんでしたが、ドイツのデュッセルドルフのモールの有料トイレでとうとう見つけてしまいました!一体便座が自動で回るというのはどういうことかと、なかなか想像つかないものですが、目の前で実際に動くのをみるとなかなか衝撃的です。
 高機能トイレといえばウォッシュレットをはじめとした、便座が自動で開くなど日本の独壇場かと思っていましたが、ウォッシュレットこそ普及していないヨーロッパですが、なんと便座を自動で洗浄してしまうトイレがあったというのは驚きです。
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Thu

20

Feb

2020

巨獣めざめる (上)巨獣めざめる (下)

こちらも巷の書評で高評価でしたので、暇ができたら読もうかと買っておいたものです。正直なところ、読み始める前まではあまりというか全然、期待せずに持っていたのですが、というのもSF小説というよりかは何か怪獣!?出て来そうなタイトルと、そのギャップというか概要には何ともありきたりな太陽系の小事件のような始まりがみてとれたからです。それも上下巻の上の途中まで読み始めると、結局いつもの通りなのですが、本書も期待通り一気に読み進めてしまいました。
 途中までは誰が主人公か今一つピンとこないまま、全編を通しての軸となる氷運搬船の副船長であるホールデンと小惑星ケレスの警備会社の刑事たるミラーの視点で物語は進んでいきます。特に刑事のミラー視点がそのままといえばそうなのですが、ハードボイルド調で小惑星ケレスでの生活感溢れる描写と、地球出身の相棒への境遇を通して、地球と火星、そして小惑星帯の微妙な政治的、人種?的バランスの世界観が語られていきます。本書の強烈な魅力になっているのが、近未来よりもう少し先の未来にあり得るだろう、地球と火星そして小惑星帯に人類が進出して生活感を広げている時代のリアリティと言うか、ここら辺が先々(勝手な感覚ですが数百年後ぐらいでしょうか)ありえそうな未来の世界感が絶妙なリアリティで迫って来ます。
≪ 民間人が主人公!?SFスペースオペラ「巨獣めざめる」 ≫の続きを読む

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Sat

28

Dec

2019

異色のダークモダンホラーSF「鼻」

   鼻 (角川ホラー文庫)

この本はAmazonの書評で「終わりに希望はないがどんでん返しが魅力」的なコメントが多かったので、それにつられて購入しておいたものです。暇な時に読もうかと思い、年末年始休みに何となく読んでみたら、内容に引き込まれて一晩で読んでしまいました。項数も薄く、表題作の「鼻」を含めて3つの短編が収録されている短編集なので、まああっという間には読めてしまうのですが、この著者の曽根圭介さんの構成力と行間に見られる筆力と言うか、独特の世界観の構築力には思わず引き込まれずにはいられないといった感じです。確かに3つの短編全てで、ラストの絶望感というか不条理な結末はなんともいたたまれない感じなのですが、想像していたよりかは普通に!?読むことが出来ました。というか、予想していたような読了後の不快感のようなものは全くなく、むしろこれらの独自の世界観から導かれる何とも諦めるしかないような“痛い”結末という感じでしょうか。なかなか読んでみないと分からない感覚ではあります。
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Thu

21

Nov

2019

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)ロボットの時代 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)

こちらも夏の帰省時に購入していたSF小説、しかも今更ながらの古典ですが初めて読んでみました。アイザックアシモフと言えばロボット三原則で超有名な作家であり、今回のロボット小説を読む前から色々な媒体で既に見聞きしていました。確か馴染みのあるものだと、これまた言うまでもなくロボットアニメの金字塔とも言える手塚治虫原作の鉄腕アトムにも、このロボット三原則は出てきており、色々な意味で現代のSF小説に止まらずにアニメや映画に多大な影響を与えている作者であり、そのロボット三原則と言えるのではと思います。
 そんな超有名な小説も今回初めて読むと言うのが、自分でも意外に感じつつ、楽しみに読み始めました。ちなみにアシモフの小説は随分と前に出世作と呼ばれている「夜来たる」という短編が入っている刊を読んだのみでした。いわゆるロボット三部作という形で、アイザックアシモフのロボット小説は三冊(正確にはロボット以外の短編と合わせたもう一冊があるそうなので、ロボット小説としては三冊半とのことですが)あるそうですが、それすら知らずにとりあえず最初の二冊ということで、今回の「我はロボット」と「ロボットの時代」を購入した次第です。
≪ アイザックアシモフの古典!我はロボットとロボットの時代 ≫の続きを読む

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Fri

08

Nov

2019

トム・ハザードの止まらない時間 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

夏の帰省時に買っておいた本の一つですが、ポケット版の大きさでSFファンではすっかりお馴染みの早川書房から出版された新しい?文庫スタイルのポケット版サイズというのが古めかしい感じだったのですが、よくよく出版日を見てみると2018年ということで、出版されたばかりの本のようです。邦題の「トム・ハザードの止まらない時間」ですが、原題は「How to Stop TIME」で題名からもタイムトラベラーかタイムスリップものかというのが容易に想像できます。ストーリーは遅老症(アナジェリア)を患った(という表現が正しいのか、病気の一つとして扱われています)主人公のトム・ハザードがヨーロッパ中世の1500年から現代に至るまでの人々との出会いと葛藤を中心に、同じアナジェリアの人々の組織との関りを描きながら進んでいきます
 同じく中世の時にもうけた一人娘のマリオンを探しながら生き抜いていくというのが、物語のもう一つの軸になっています。現代に潜んで生きているトムが自分の過去400年を振り返りながら進んでいくスタイルですが、中世のペスト禍やシェイクスピアとの出会いなど、要所にエピソードが盛り込まれていてどちらかというとビジュアル的な脚本を読んでいるかのような臨場感です。
 それもそのはず?で、この小説は既に出版前から映画化権が買われているとのことで、映画化もされる前提ということなのでしょう。最近はコンテンツの青田買いのようで、既にドラマ化、映画化というのが目につきますが、それはそれで小説の面白さの裏返しであればよいのではとは思います。
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Fri

01

Nov

2019

SF版ベトナム戦争!?「終わりなき戦い」

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

この本を読んでみて既視感を覚えたのが随分前に読んだ「宇宙の戦士」ですが、それもそのはずでこの2作はいわゆる宇宙の軍隊戦争もの!?として双璧をなす傑作とのことです。読んだときはそんなことも知らずに読んでいましたが、読み進めるうちに随分と共通点が多いなと思いながら読んでいた次第です。一つはやはり異星人との戦争の定番!?ともいえますが、相手が全くもってコミュニケーションが難しい相手だということです。「宇宙の戦士」のときは確か巨大昆虫みたいな異星人だったかと思いますが、こちらはもう少し人類に近いイメージで描かれています。とは言ってもやはり相互のコミュニケーションが不能な敵として描かれており、それも理由になって戦争はまさに「終わりなき」様相で進んでいくという物語です。
 2作品に共通していると言えるのが、舞台は未来の宇宙であるものの軍隊の在り方や訓練の様子、組織のヒエラルキーなどは現代の米軍と何ら変わることがなく、カルチャーはまさに海兵隊そのものというのが、何ともギャップがありつつもここら辺が感情移入し易いところなのでしょうか。それもそのはずで、著者のジョー・ホールドマンのベトナム戦争の従軍経験をベースに書き上げられてものということで、モチーフや舞台こそSFですがここら辺は完全にベトナム戦争への反戦的な皮肉に満ちたストーリーともいえます。
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