Sat

02

May

2020

場の量子論の入門書「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」

時間はどこから来て、なぜ流れるのか? 最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」 (ブルーバックス)

しばらく振りですが物理学の文芸書!?とも言える本書を手に取ってみました。宇宙論や物理の本に興味があるといっても仕事や勉強で物理を使うような場面はないため、(一応、理系なのですが)文系の方々と同じようなスタンスで読める本でないととても手を出せないという前提があります。そんな方々にも十分読める本書は例によって数式などは一つも使わずに難解な?物理の解説を試みている書籍といえます。内容はタイトルにある通り「時間」についての物理学的なアプローチからの解説書になるのですが、一年以上前に読了した「時間とはなんだろう」と比べてもかなり進んだトレンドの内容になっています。
 当時に「時間とはなんだろう」を読了した後はだいぶ「時間」の正体に近づいていると感動したものですが、本書を読むとそもそも少し前まで(一般人たる)自分にとっては最新!の宇宙論、物理学だと思っていた内容が既に古典的な理論として紹介されています。具体的には相対性理論はともかくとして、量子論そのものも古典的な解釈と最新のトレンドたる「場」の考えから考える量子論があるということで(よく理解していないので、違った理解かも知れませんが)、ここら辺からして大分、今まで読んできた書籍と内容が違うなという感じです。
 本書の最初にある「本書の構成」で解説されている大きく二部構成になっている本書の流れがポイントと言えるのですが、「時間の流れが物理的には存在しないことを明確にする第Ⅰ部と、それではなぜ時間が流れるように感じれられるのかを問う第Ⅱ部である。」というところで既にわくわくする反面、相当ハードルが高いぞという予感がします。実際には古典的!?物理のアプローチであるニュートン力学から相対性理論に始まる時間の考え方で既にお馴染みのウラシマ効果が物理的にはどのような解釈になるのかを説明するのが第Ⅰ部で、時間が相対的なものだという(なので物理的には存在しない!?)前提でではなぜ時間が「流れる」ように感じるのかという核心に迫る第Ⅱ部といえます。Ⅰ部は何とか今まで読んだ書籍の復習も兼ねて何となくついていけたものの、Ⅱ部になるとあまりに斬新な考え方と量子論の最新トレンドの解釈になかなか一読しただけではついていけません。実はこの書籍はKindleで購入して読んでいたのですが、読み終わったときにあまりにも唐突で(夢中になっていたというのもありますが)いきなり終わってしまった感があって思わずダウンロードエラーかとファイルを見直したほどでした。

 Ⅱ部で解説に使われている量子論的な干渉の解説とその「脱干渉」で生じる「世界線(某アニメの世界線の意味で使いますと断り書きがあったのにはちょっとびっくりしましたが)」の確定の話など、ほとんどついていけない中にも今までの書籍で解説されていた多世界解釈の現実的な解を説明しているのだろうというふうにも受け取れました。終盤のタイムマシンのパラドクスで解説されている量子論的な干渉と確率論のあたりになると、ほとんど理解はできていないものの、そもそもが時間が「流れる」ものとして存在しない以上、パラドクスを考えること自体がナンセンスともとれるような記述になっています。

 そして最後の章で、ともかくもなぜ人間が時間を「流れる」ものとして捉えるのかという核心に触れるところでは、意識と量子論を絡めた解説で終わるのですが、最後の一文である「時間の流れは、物理的に存在するのではない。心の中で流れるのである。」という内容が全ての結論のようです。もちろん、これだけを読むとなんだこれはという話になりますが、本書全編に渡ってこの一文に至る解説を(きっと著者からみればですが超分かりやすく)延々と述べた結論としては重みがあります。結局は人類が意識というものを解明できない限りは時間の存在も明確には解決できないことを示唆しつつも、現段階の最新物理学とも言える場の量子論から導かれる解答は、最後の一文になるのでしょう。

 こうなると人間として存在している限りにおいては、時間というものを正確に捉えることが意識としては不可能とも考えられる解釈です。それでも自分が生きている間に時間の謎についてこれだけ迫っている物理学ですから、もしかしたら時間を物理学的に理解できる日がくるのもそんなに遠くないのかも知れません。しかし、既に物理学のトレンドが「場」という全くもって学校などで習っている物理の基礎とはかけ離れつつある概念になっている今、学校で教える物理の内容も基礎としての古典物理の数式などはあまり意味はなく、もっと概念的な話をしていかないと学問そのものに対する誤解が生じる(既に生じている!?)なあと思いました。確かに運動量の連続性や保存則を考えると時空間にそれを伝える媒体としての「場」に行きつくのは自然な考えですが、それが実際の真理として証明されつつある現在は、もしかしたら本当にSFのような時空間を制御できる時代がやってくるのではと予感させます。

 何事もそうですが、実現してみれば何てことはない技術や事象もそこに辿り着く前には想像すらできない訳ですから、この先の未来も案外に想定外の技術革新が進む可能性は高いのではと考えます。いづにしても本書は興味が尽きない「時間」についての考察を物理的アプローチで解き明かす手法で一気に読ませますが、少なくても2,3回は読み直さないと内容に追いつかなさそうです。

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