Wed

08

Apr

2020

コロナ禍の欧州から「復活の日」を思い出す日々

復活の日 (角川文庫)

日本でもとうとう緊急事態宣言が発令されましたが、こちら欧州は既に各国がそれぞれに色々な宣言や対策を実行済みなのは周知の通りです。私個人の状況はというと、先月の第二週目にいつも通り!?週末を駐在先のポーランドで過ごすために出張先のオランダからドイツ経由で戻ったまでは良かったものの(もっとも既に戻る時点で隣国のチェコは入出国制限が発動されており、ポーランドも時間の問題ということで、週明けの戻りの時には、長期滞在用の荷造りをしなければとは考えていました)、いざヴロツワフについてみると飛行機で移動している間に、ポーランドも入出国制限が発令されており、次の日の土曜日の深夜である日曜日からは外国への飛行機が制限されるとのことでした。万事休すかと思いましたが、なんとかヴロツワフ発のオランダのエイントホーヘンという空港への直行便を捕まえることが出来て、一晩で滑り込みでオランダに戻ってこれたという次第です。
 長くなりましたが、そんな経緯でこの1ヶ月オランダでホテル住まいをしながら、仕事は続けている状態ですが、最初の滞在先のホテルは国の感染者用の隔離施設に指定されたために、ヘーレレンという別の街のホテルに移ったり、色々とオランダも制限が発令されているものの、南欧のイタリアやスペインとは比較にならないほどののんびりさで、レストランやモールこそ閉鎖されているものの、作業所への勤務も続けられていますし、ドイツから通勤している人も居るくらいです。それでもオランダは特別緩い方かもしれず、隣国のベルギーとの国境は既に閉鎖されていますし、ドイツとの国境も今週末からはようやく、制限がかけられるとのニュースも飛び込んでいます。
 それでも本当に欧州、特にEUのシェンゲン圏に居るとしみじみ思うのが、日本の千葉県と埼玉県程度の距離感しかない国同士で、国境を超えると言葉も違えば、街並みも変わるというのは何とも欧州という限られた地域にある多様性と同時に複雑な国同士の歴史を感じざるを得ません。

ペスト (新潮文庫)

 もっともオランダに滞在せざるを得なくなった(長期滞在ビザを持っているのでポーランドに入国は出来るのですが、航空便がないのと戻っても14日間の隔離措置があるため、戻り用がないという現実もあります)この1ヶ月で、欧州はもちろんのこと、世界中が一変してしまったことは間違いないと思います。巷にコロナの情報や欧州に駐在している人のブログは溢れていますので、詳細はそちらを参照してもらうとして、個人的には今のところは色々な制限もありつつ、ホテルと作業所を往復して仕事を続けてられる現状が何とか続いてくれればと祈るばかりです。そんな日々ですが、世の中的にはこの現状にラップさせる小説というとアルベルトカミュの「ペスト」ということらしいのですが(私も随分昔に読みましたが、カミュの小説の中では緊迫した閉鎖空間の人間模様ということで、不条理をテーマにしながらもリアルでテンポの良い作品だった印象があります)やはり私が一番最初に思い浮かべたのは、日本のSF界の不動の巨匠である小松左京の「復活の日」でしょうか。もう高校生か大学生の頃に最初に読んで、その後に何度も読んでは所有していた本も今現在は手元に持っていないのですが、何度も読んだせいかいまだに細部を思い出すことが出来ます。

 物語の発端は、生菌兵器として開発されていたウィルスが、武器商人により運ばれている途中で雪山に墜落し、春の雪解けと共にウィルス禍が世界を覆うというストーリーで、結果的に南極にある基地を除いて世界は死に絶えるのですが、その過程で日本で治療にあたっている医師が心中を励ますために思うくだりの内容が衝撃的です。確か、治療に疲れた老齢の医師がふと現状の厳しさを思いながらも、「過去のスペイン風邪やインフルの流行の時も、どんなに厳しいウィルスの流行でも必ず終わりは必ずやってきて、やがては流行は終息してきたのだから、今回も耐えて頑張ればいつかは流行が終わるはず」と心の中で自分を励ますのですが、ふと「今回はもしかしたら(流行の)終わりはこないのでは?その結末は何を意味するのか?」と思いを馳せながらその医師は結局ウィルスで死んでしまうというシーンです。

 今回のコロナもつい1ヶ月前の2月末あたりは、ここオランダも地元のカーニバルの話題で一色で、コロナなどアジアで流行している遠い病気で困ったものだという程度だったのですが、1ヶ月も経たないうちにこの欧州が最大の感染者と死者数を抱えるに至ったのは周知のことです。それでも当たり前なのですが、自分を含めていつかは流行は終わるし、時期がくれば元に近い状態になるのだという半ば確信的に信じているのですが、誰も流行が収束する時期は分からないし、そもそも本当に(流行が)終わるのかというのも、今の現状から確たることは言えないというところが恐ろしいことなのかと思います。そんな不安な心理と細菌兵器の恐ろしさと絡めて、もう何十年も前にSF小説として仕上げた小松左京は本当に素晴らしい作家だったのだと改めて感心してしまった次第です。
 今回ばかりはいかに素晴らしいSF小説とは言え現実には人類の滅亡となっては困りますので、あくまで今日の現状をズバリ看過したかの如くの小説のストーリーを賞賛しつつ、一つだけ気になるのは「復活の日」でも警鐘と共に人類滅亡の発端となったウィルス禍が研究所から持ち出された細菌によってもたらされたというモチーフだけは、現実とは異なると信じたいです。ちょっと今読み始めるとさすがに臨場感があり過ぎですので、いつの日か一服したあとに改めて読み直したいと思います。



コメントを残す