書籍評

Sun

09

Jun

2019

海外ロボットSF「巨神計画シリーズ」

巨神計画 上 〈巨神計画〉シリーズ (創元SF文庫)巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

こちらも元々は暇つぶしで古本屋で購入した最初の「巨神計画」を読んだのが、春先だったのですが、意外な⁈面白さについKindleで続編の「巨神覚醒」まで読み進めてしまいました。そして例によってこれも3部作構成で、最後の「巨神降臨」は発売日を待ちつつ、すぐにKindleで購入して一気読みしてしまいました。全編を通しての主人公は、子供の頃に偶然にも巨神(巨大ロボ)のパーツの一部である手を発見した女性の科学者なのですが、彼女を中心としてパイロットであるカーラとヴィンセント、続編からは彼らの子供であるエヴァを中心に話が展開していきます。そして、前半を通して重要な役回りを演じているのが、前半の物語の語り手でもあるインタービュワーと呼んでいる謎の高官?です。
 このシリーズの特徴的なところが、全編を通じてストーリーがいわゆるインタービュワーによる聞き取り記録や、ある時にはある人物の手紙、通信記録などで構成されていることで、これは前に読んだワールドウォーZに似ている形式とも言えます。もっとも形式については、もっと変化に富んでいるので、読者にとってはニュースや後日の記録を読みながらそれでいて臨場感一杯の構成と、話の背景まで途切れずに理解できているのは、作者の文章力と構成の秀逸さがでているところかと思います。
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Tue

30

Apr

2019

改めて想う震災被害「津波の霊たち」

津波の霊たちーー3・11 死と生の物語

早いもので東日本大震災から8年が過ぎてしまいましたが、随分前に日経新聞の書籍評にあったこの本を最近ですがKindleで購入してから、一気読みしてしまいました。ちょうど時期も震災の3.11を過ぎたあたりではあったのですが、改めて震災被害の何たるかを(ある一側面ではあるものの)思い知らされた感じです。この書籍ですが、実はロイド・パリーという在日歴が長いものの外国人である英国人の記者によるものです。そして全編を通じてクローズアップされているのが、震災被害でも未曾有の悲劇となった大川小学校の遺族を中心に、震災後のいわゆる「霊」にまつわるエピソードと織り交ぜて進んでいきます。ただし、もちろん震災の怪談というものではなく、日本文化でもある祖先の霊を祀るという背景を掘り下げつつ、大川小学校の遺族達を追うことで、震災被害の深淵さと遺族にとって終わらない震災被害を外国人の目ならではの客観性を保ちつつ、冷静に我々に訴えかけてくれる秀逸なルポタージュといえます。
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Sun

31

Mar

2019

パインズ ―美しい地獄―

こちらのパインズも年末年始の帰省時に購入しておいた書籍の一つですが、実は書評でミステリアスなシチュエーションでラストのどんでん返しがあるということで、非常に楽しみに読み始めました。導入はアメリカのとある田舎町で主人公が交通事故から目覚めるところから始まります。そして、その田舎町であるパインズから外部との連絡が取れず逆に外部からも彼の消息が掴めなくなっているというのが、町の中からと外からの描写で進んでいきます。ここら辺、何か昔に観たようなドラマのシチュエーションでもあるのですが、途中で何やら違うぞというのが、同じくパインズから出られなくなり潜伏しているもう一人の女性が主人公とは違う時間軸ということで、何やら時間の進み方がおかしくなるという要素もあるのが示唆されます。そんな中で、その女性と脱出を試みる過程で、脱出者を血祭りに上げるといういびつな町の秩序から、カルト集団なのかという示唆もあり、本当にこの町の存在や外部との関りがさっぱり予想できずに進んでいきます。
 そして、とうとう主人公が町と外部とを隔てるフェンスに辿り着くにあたり、高圧線で外部と遮断されている境界が明らかになり、やっぱりこの町は何らかの目的で意図的に隔絶されているのが分かってきます。それでもこのパインズの意図が分からないまま進むのですが、周囲を崖で囲まれている町から脱出する際に崖を超える逃避行の中で、得体の知れない怪物が出てきて、主人公はそれらとも闘いながら逃避行を続けます。その怪物の存在が、これまた現代の常軌を逸しており、SF要素を予想させつつ最近見た三部作映画のメイズランナーのようなシチュエーションなのかとも予想させます(結果的にこの予想が大分近い予想ではあったのですが。。。)※ちなみに「続きを読む」で結末に触れていますので、この楽しいSFの読書の楽しみを取っておきたい方は、先に本書を読むことをお勧めします!
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Thu

28

Mar

2019

久しぶりの国内SF傑作「オービタルクラウド」

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

日本人作家のSF小説は先日に読了した伊藤計劃の虐殺器官とハーモニー以来ですが、例外はあるものの総じて洋書の方がコンテンツは多いのかと思っていましたので、ほとんど期待しないで読み始めました。結論からいうと、期待を大きく外してくれて!?とてつもなく面白いエンターテイメントSFでした!日本のSF作家と言えば不動の大家である小松左京を始め、ショートショートの星新一など秀逸な方々がいる反面、昨今のハードSFでは量と質共に海外に負けている感がありました。
 そのように感じていた中で、このオービタルクラウドですが、小説の構成としては各人物の各シチュエーションで細かく分かれてる現在進行形で、これは作者の力量がないと散漫で収斂しないで終わるパターンもあり個人的にはあまり好きな構成ではありません。ましてや邦書のスピード感でまとまるのかと心配でしたが、読み始めたら一気に最後まで読了してしまいました。
 まず主人公がまだ20代と思しきフリーのITエンジニアで、いわゆるITベンチャーの卵である若者というところからして、現代のシチュエーションだなと感じます。そんな主人公がどうやって宇宙の軌道の一大事件と関わるのか、詳細は読んでのお楽しみですが、本当にテンポよく無理なくストーリーが展開していくところが、この著者の真骨頂だと思います。
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Mon

25

Feb

2019

この本も年末年始の帰省時に買っておいて最近まで読んでいなかったのですが、ふと手に取って読み始めたのですが今まで膨大な(という程でもありませんが、2,30冊程度は読んだかも…)英語勉強法を読み漁っては試して挫折を繰り返してきた過去でしたが、この本は間違いなく今までの生涯で読んだ中で一番のそして目からウロコ!が落ちた英語勉強法の本です!実はあまりに凄い本だったので、流し読みしてからじっくり付箋とマーカーを付けながら読み直しているので、まだ読了しきれていないのですが、今まで海外駐在を決めたかれこれ10年前からも取り組んできた英会話向上の間違いなく切り札になる勉強法が載っている本と言えるのではないのでしょうか。この「海外ドラマはたった350の単語でできている」という長いタイトルと(失礼ながら)あか抜けない装丁から、よくある英会話勉強法の一つかとほとんど期待もせずに何となくネットで購入してみましたが、読み始めてみると著者のCozyさんが苦労して会得?した英会話の学習法が余すことなく記載されています。
≪ 目からウロコの英語勉強法「海外ドラマはたった350の単語でできている」 ≫の続きを読む

Thu

21

Feb

2019

私たちは時空を超えられるか 最新理論が導く宇宙の果て、未来と過去への旅 (サイエンス・アイ新書)

こちらの本もすっかりお馴染みになった松原隆彦先生の書籍なのですが、最初は今まで読んでいた宇宙論の入門的な書籍でかつ最新の書籍ということで、何か焼き直しの知識でも書いてあるかなという程度で読み始めました。ところが、冒頭から相対性理論の宇宙船の浦島効果の話から具体的に宇宙の大きさを理解させるという糸口にすっかり没頭してしまい、これまた一気に読んでしまいました。本書は3部構成の非常に分かりやすい内容で、いわゆる時空とは何かと最新理論から導き出される時空を解明する糸口を丁寧に解説しています。第一部は未来と過去へ行ける可能性、いわゆるタイムマシンの話を糸口に現在考えられている時空の姿を説明していきます。いわゆる相対性理論のウラシマ効果で、未来へ行ける可能性はまあ読んだことがある方も多いのかと思いますが、それに加えてワームホールを利用した過去へのタイムマシンの理論的可能性が分かりやすく説明されており、初めて過去へのタイムマシンも理論的に可能性があることを知りました。
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Wed

20

Feb

2019

ハリウッド版吸血鬼「ストレイン」

>沈黙のエクリプス (上) (ストレイン)沈黙のエクリプス (下) (ハヤカワ文庫NV)

読むきっかけになったのは、Amazonで見かけたドラマ版の解説だったのですが、無料だったシーズン1の第一話だけ観て、後は原作を帰省休みに一気に購入してみました。各上下で三部作ですので合計6巻なのですが、実は最初の1巻だけは昨年に購入した際に読んでいました。残りを年末年始に購入して、年明けから一気に読み終えたのですが、感想としてはまずまず面白かったというところでしょうか。
 吸血鬼ネタは好きなジャンルの一つで、大昔にハマったスティーブンキングの「呪われた町」(今でも吸血鬼小説はこれがベストだと思います!)に始まって、バンパイアハンターDシリーズなどなど読んできました。映画もまあ好きなジャンルで色々観ましたが(映画だとパッと思いつくのは「ヴァンヘルシング」でしょうか)、小説・映画問わずに吸血鬼の描かれ方や定義は千差万別です。そんな中でこの「ストレイン」シリーズは、冒頭はニューヨークに着陸したジャンボの乗客が全て死亡しているというショッキングな導入から始まります。乗り込むのはCDCの検査官であるイーフで、そのまま彼がシリーズの主人公となるのですが、冒頭の導入からは吸血鬼を疫病として扱う現代的な解釈のSFかと思いきや、序盤からセントキアンという吸血鬼をよく知るユダヤ人の老人がキーマンとして登場し、定番のキャラクター配置も抜かりありません。原作者はハリウッドのヒットメーカーであるギレルモ・デル・トロで、映画の脚本を読んでいるような構成でテンポよく進んでいきます。そんな感じでしたので、3部作6冊もあっという間に読むことができました(直前に読了したカズオイシグロの「充たされざる者」とは両極端とも言えるでしょうか)。
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Sat

09

Feb

2019

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

この「虐殺器官」と「ハーモニー」はいづれも伊藤計劃(いとうけいかく)という日本のSF作家の作品で、最初の「虐殺器官」は2,3年前にKindleで一気読みしておりました。その後、しばらく間を空けて同じくKindleで「ハーモニー」を読了したのが最近なのですが、この2作は読む前は知りませんでしたが、「ハーモニー」で度々言及されている「大災禍」が「虐殺器官」のラストでもある世界規模での虐殺行為による混乱のことを暗示しているとのことで、いわば連作になっている感じです。
 「虐殺器官」は割とミリタリー的なストーリー展開なのですが、背景の世界観は近未来の混乱した新興国とテクノロジーの発達した先進国が入り混じった、士郎正宗の攻殻機動隊やアップルシードを彷彿とさせるものがありつつも、独特の設定と描写でそのオリジナリティに引き込まれます。主人公は新興国で連続する虐殺案件の背後にいるアメリカ人(主人公はアメリカの情報軍の特殊部隊員という設定)を追いかける中で、虐殺を起こしている!?動機とその手法を知ることとなるのですが、それが何とも人間の本性に触れている設定で考えさせられます。
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Sun

30

Dec

2018

ソノ気が大事!技術士二次試験一発合格のツボ

聴く! 技術士二次試験 一発合格のツボ

既に今月の初旬には刊行されていた待望の新版となるこの「聴く! 技術士二次試験 一発合格のツボ」ですが、実は訳あって昨日に手に入れることが出来ました。しかもなんと著者の山崎恭司さんから手渡しで頂いたという光栄なシチュエーションでした。なぜこんな名誉な事態になったのかというのは、実は(趣味とITリテラシーの補完のつもりでしかなかった)このブログがご縁になった次第です。思えば最初の衛生工学部門の技術士二次試験に合格した経緯をこの当時の記事に書き連ねたのが2015年3月のことだったのですが、その後の2015年6月にこのブログ記事を読んでくださった山崎さんからメールをいただき、まずは改訂版を計画されている中で合格体験記を掲載いただけないかというお話をいただきました。
 その後、2017年3月に総合監理部門に合格できた際にもメールをいただき、その頃から次の新版の執筆ペースが加速されたようで、新版に掲載される技術ノートについてデジタルノートにも触れられるということでしたので、実は原稿の段階でそこのページだけでしたが事前に読む機会なども頂いておりました。実は今回の新版には、執筆協力ということで名前も掲載いただいたという非常に光栄なことになったのですが、私が協力できたことと言えば、そのデジタルノートの原稿を事前に読ませていただいたことと、ブログの感想文をそのまま掲載いただいたという程度です。何ともそれだけで執筆協力というのも申し訳ない次第だったのですが、どちらかというと書籍を手渡しで頂けるというメールをいただいていからは、そちらの方に気が向いてしまい今回6年振りの年末年始の日本帰省も何としてでも実現しようと頑張った次第です。
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Sun

14

Oct

2018

宇宙はどうして始まったのか

春先に読了した松原隆彦先生の「宇宙に外側はあるか」から興味が尽きない先生の宇宙論ですが、引き続きこちらの「宇宙はどうして始まったのか」も更に深化!?した宇宙論の本です。「宇宙に外側はあるか」より後の2015年に発行された書籍のようですが、内容は最新の宇宙論も織り交ぜており、主に宇宙の始まりのビッグバン理論から素粒子論、そしてもはや哲学の領域とも言える人間原理などについて、順を追って分かりやすく解説されています。そんな中でも特に興奮を覚えるのが、終盤の素粒子論からそもそも現実世界が理論的に!実在しているのか、などという曖昧かつ根源的な疑問に対して、あくまで物理と科学の視点で解説しているところです。それでも、宇宙論の究極でもある「宇宙の始まり」の疑問は、そもそも解決されるのかという遠大なテーマはなかなか方向性すら見えない感があります。そのように結局は疑問は疑問で終わってしまう宇宙論の書籍がほとんどの中で、本書で一番の驚愕しかつ核心に触れているのではと感慨深く読んだ箇所が、最後の方に松原氏が例えとして持ち出した「十分に賢いプランクトン世界」の架空の例え話のでしょうか。
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Tue

11

Sep

2018

全滅領域サザーンリーチ-ANNIHILATION

先に読了したブラインドサイトに引き続きSFです。サザーン・リーチというエリアXに関しての三部作ということで、これはその一作目の「全滅領域(原題:ANNIHILATION)」で、エリアXへ潜入する調査隊の話です。ジャンルはてっきりSFと思って買ったのですが、読んだ後の巻末の解説によると「ニュー・ウィアード(New Weird)」という新しいジャンルで、Weird自体の意味が載っていない英語辞書もあるのですが、「奇妙な」という意味のようです。そう言われてみるとハヤカワ文庫なのですが、水色の表紙のハヤカワSF文庫ではないところからも、SFとは一線を画す位置づけになっている感じです。確かに読後感はなんだかモヤモヤしてスッキリと謎が解けない感じの反面、最後まで引っ張る構成と独自の世界観は凄いものがあります。
 主人公である生物学者の主観で語られる日誌を読んでいることが途中から分かるのですが、主人公が最後にどうなったのかはあくまで不明瞭なままで、イコール物語の世界観のキーでもあるエリアXと監視機構も正体不明のまま終わってしまいます。それでいて、全体として何かに対する不安感というか恐怖が貫かれており、SFと言うよりかは、未知へのホラーといった小説でしょうか。これがいわゆる「ニュー・ウィアード」なるジャンルなのかも知れません。
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Wed

05

Sep

2018

思考実験的ハードSF!?「ブラインドサイト」

ネットの書評か何かで風変わりなハードSF!?ということで、興味を持ったので夏休みの帰省時に購入した久しぶりのSF小説です。ファーストコンタクトものということで、導入部は2回の無人探査によるコンタクトが失敗の後に、「第三波」と称する友人の主人公たちの宇宙船が異星人と思われる船(建造物?)にコンタクトを試みるところから始まります。異質なのがその乗組員達で、主人公と思われる大脳を切除した統合者、多重人格の学者、生物学者に女性の軍人、それとリーダー格の吸血鬼!からなるメンバーです。最初は何かのコメディかと思いきや、これらの人物像の裏付けがきちんと文中で説明されており、リーダーとなっている吸血鬼は復活種?ということで、人類の手で蘇らせた古代のホモサピエンスの亜種という立派な位置付けとなっており、人類より知性や判断力が優れているという設定になっています。多重人格もこの時代(世界)では、一つの立派な固有人格として認知されていて、かつて精神病扱いされていた昔の世紀とは異なる人物として描写されています。何より大脳切除した主人公が、その理由ゆえにこれらのメンバーをモニターするプロフェッショナルの位置づけで搭乗しており、この主人公の視点で物語が進められます。
 上下巻からなる長編なのですが、登場人物は回想場面以外ではこの乗組員だけで終わるのですが、不思議に間延びせずに一気に読んでしまいました。全体的に描写が抽象的ではあるのですが、吸血鬼もツールとして使役している?ほど発達したと思われる人類社会の世界観が背景にあって、それだけの人類でも持て余している更に高度な異星人とのコンタクトというシチュエーションが、読むものを惹きつけるのかと思います。
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