Sat

09

Feb

2019

夭逝のSF作家 伊藤計劃の代表作「虐殺器官」と「ハーモニー」

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

この「虐殺器官」と「ハーモニー」はいづれも伊藤計劃(いとうけいかく)という日本のSF作家の作品で、最初の「虐殺器官」は2,3年前にKindleで一気読みしておりました。その後、しばらく間を空けて同じくKindleで「ハーモニー」を読了したのが最近なのですが、この2作は読む前は知りませんでしたが、「ハーモニー」で度々言及されている「大災禍」が「虐殺器官」のラストでもある世界規模での虐殺行為による混乱のことを暗示しているとのことで、いわば連作になっている感じです。
 「虐殺器官」は割とミリタリー的なストーリー展開なのですが、背景の世界観は近未来の混乱した新興国とテクノロジーの発達した先進国が入り混じった、士郎正宗の攻殻機動隊やアップルシードを彷彿とさせるものがありつつも、独特の設定と描写でそのオリジナリティに引き込まれます。主人公は新興国で連続する虐殺案件の背後にいるアメリカ人(主人公はアメリカの情報軍の特殊部隊員という設定)を追いかける中で、虐殺を起こしている!?動機とその手法を知ることとなるのですが、それが何とも人間の本性に触れている設定で考えさせられます。
 近未来の特殊部隊としての装備や子供を含む傭兵を殲滅するために(罪の意識を遮るために)主人公らに施す感情のマスキング処理などは、もう実用化されるのではと思わせるような技術描写でSFならではの面白さでしょうか。「虐殺器官」ラストの顛末は何ともいいがたい終末観ですが、追っていた米国人が母国の虐殺を避けるためにしていた行為を、当の主人公が最後にしてしまうところに大きな皮肉!?があるのかと感じます。
 そして後日談と言うかその先の未来の世界観で進む「ハーモニー」は、「大災禍」を受けて一種のユートピアを実現したかに見える人類社会が舞台です。そんなユートピアの中で主人公である世界保健機構(WHO)の螺旋監察官の「わたし」の視点で進む物語は、主人公の歪曲した?世界観と必ずしも実現されたユートピアを肯定しきれない性格も相まって、ユートピアの中でも不安な世界である現実に隠された驚愕の計画が明らかになっていきます。その計画自体は、前作の「虐殺器官」のラストの「大災禍」を受けた究極の人類の救済策?として存在しつつも、最後に実行されたその計画の先は果たして人類の究極のユートピアなのか、はたまた救われない永遠のディストピアの始まりなのか、という感じです。
 作者の伊藤計劃氏は本当に残念なことに2007年に肺がんのため34歳の若さで早世されてしまっていますが、残された作品はノベライズなども含めて5作品ほどということで、本当に残念で惜しまれる作家です。たらればになりますが、存命してその独特の作風と世界観の深淵を読んでみたかったと思います。この作風、世界観は一つのジャンルともいえるので、今後、これらを感じさせるような作者が出てくれれば幸いでしょうか。まだ未読の作品もありますので、楽しみに読んでみたいと思います!


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